スポーツまるごとHOWマッチBACK NUMBER

鍛え上げられた選手の肉体美を伝える、“世界一美しいレスリングユニフォーム”誕生秘話…東京五輪金メダルの須崎優衣も使用するヒミツ

posted2022/12/11 06:00

 
鍛え上げられた選手の肉体美を伝える、“世界一美しいレスリングユニフォーム”誕生秘話…東京五輪金メダルの須崎優衣も使用するヒミツ<Number Web> photograph by AFLO

レスリング界に革命を起こしたシングレットは、須崎優衣も愛用している

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

PROFILE

photograph by

AFLO

『Sports Graphic Number』で好評連載中の「スポーツまるごとHOWマッチ」を特別に公開します! <初出:1058・1059号(2022年9月8日発売)、肩書きなど全て当時>

 芸人たちが“吊りパン”をはいて笑いを取ってきたせいか、レスリングに垢抜けないイメージを持つ人もいるかもしれない。だがそれも、過去のものになろうとしている。いまレスラーの間で、従来とは一線を画したスタイリッシュなシングレット(レスリングのユニフォームのこと)が流行っているのだ。

 鍛え上げられた肉体美やウエストを強調する、色鮮やかなMAMOのシングレットは、ベーシックモデルで1着1万4000円(税別)。急速に増えているMAMOの愛用者には東京五輪金メダリスト、須崎優衣さんがいる。

 2018年に同社を立ち上げた、元全日本学生チャンピオンの半田守さんがいう。

「引退後、グッズメーカーのスポーツ事業部で働いていたとき、かつて指導をしたジュニアチームからシングレットの製作を頼まれたのが、事業を始めたきっかけです」

“世界一美しいシングレット”誕生秘話

 その後独立して起業した半田さんは、日本一を目指して開発に取り組み始めた。日本の大手総合スポーツメーカーには、世界最高品質のシングレットをつくるところがあるが、レスリングは市場が小さいこともあり、ほとんど営業に力を入れていなかった。

「シングレットは赤と青それぞれのコーナーで使える色が決まっていますが、自由にデザインできる余地がある。専門ブランドとして大手にできない大胆な提案をして、いままでにない格好いいものをつくっていけばもっと伸びる、日本一も夢ではないと思ったのです」

 そんな半田さんにとって頼もしい伴走者となったのが、独立後に出会ったブランディングデザイン会社nottuoと大阪の縫製会社、大栄商会。唯一無二ともいえるシングレットの形状はnottuoの手によるもの。ただ、そのデザインがあまりに複雑だったため、それを形にする大栄商会の担当者は七転八倒の苦しみを味わったそうだ。

「生地の選定もそうでしたが、大栄商会さんには何度も無理を言い、納期が迫る中で“もうできない”と断られたことがあります。でもそこから粘りに粘っていただき、世界一美しいと自負する、この商品ができたのです」

 伸縮性、透け防止、耐久性という機能はもちろん、格好よさを極限まで追求したMAMOのシングレット。それは性別や競技レベルの垣根を越え、だれからも熱く支持されるものとなった。たったひとりの小さな一歩から、レスリングのイメージが大きく変わろうとしている。

関連記事

#須崎優衣

格闘技の前後の記事

ページトップ