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勝ち方がすごすぎる…レスリング金メダル須崎優衣(22)が吉田、伊調を超えた“パーフェクト”な記録とは?〈開会式の旗手でも話題〉
posted2021/08/10 11:01
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
JMPA
東京オリンピックで日本レスリングは男女合わせて5個の金メダルを獲得した。女子はリオデジャネイロのときと同じ史上最多タイの4個。今回はリオまで不動のツートップだった伊調馨と吉田沙保里がいなくなったということもあり、大会前は「リオと同数の金を獲得することは厳しいのでは?」という声もあったが、日本のお家芸の強さは健在だった。
中でも女子最軽量の50kg級で優勝した須崎優衣(早稲田大)の強さは群を抜いていた。全試合テクニカルフォール勝ちで、失点ゼロ。世界のベスト16が集結した4年に一度の大会で、パーフェクトな強さを見せつけた。
ちなみにテクニカルフォールとは、ある一定以上の点差が生じたら勝敗が決せられるシステムを指す。フリースタイルの場合は10点差。フォール勝ちならまぐれという可能性もあるが、テクニカルフォールだとそれはない。日本のオリンピック・レスリング史を繙いてみても、全試合テクニカルフォール勝ちという記録は残っていない。吉田沙保里が北京とロンドンで連続して失点ゼロを記録しているだけだ。
決勝の日の須崎は“強すぎた”
白眉はスン・ヤナン(中国)との決勝戦。須崎は自ら動いてがぶるやすぐさまバックに回ってテイクダウンを奪う。それからはアンクルホールドを4回連続で決め、わずか1分36秒でスンに引導を渡した。
ワンサイドで敗れたスンの目立った動きといえば、試合開始早々腕をたぐってきた須崎の動きに即座に反応したことくらい。過去3度の直接対決ではいずれも須崎が勝利を収めているが、2019年11月のワールドカップ(国別団体対抗戦)では3-2、2017年12月の同大会では4-2といずれもクロスゲームを演じている。
しかも、2019年の世界選手権でスンはこの大会で3位以内に入賞すれば東京オリンピックの出場切符を手に入れることができた入江ゆきを3回戦で撃破。日本女子50kg級の代表争いを振り出しに戻した張本人だった。2016年のアジア選手権では、のちにリオ五輪で金メダリストとなる登坂絵莉も破っている。
実力は折り紙付きだったので、スンを須崎の対抗馬という見方もあり、直接対決が実現すれば激戦が予想された。そうならなかったのは、スンのせいではないだろう。この日の須崎は強すぎたのだ。