SCORE CARDBACK NUMBER
網走でドラフトを待った日から5年…俊足のソフトバンク・周東佑京を目覚めさせた、大学時代の恩師の言葉「お前もその気になってやるように」
posted2022/11/01 06:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Hideki Sugiyama
5年前のドラフト会議が行われた日、東農大オホーツクの周東佑京は、北海道の網走で自分の名前が呼ばれるのを待ち侘びていた。
「高校(群馬の東農大二)のときはプロになろうなんて考えてもいませんでした。3年夏の決勝で高2だった前橋育英の高橋光成君に完封で負けたとき(0-3、前橋育英はこの夏の甲子園で優勝)、ものすごいレベルの差を感じたんです(周東は3打数0安打)。ああ、こういう選手がプロへ行くんだなと思っていましたし、そんなにガツガツとプロへ行きたいとは思っていませんでした」
そんな周東にプロへの野心が芽生えたのは、東農大オホーツクに入学した直後のことだった。
「樋越(勉)監督に『4年後、絶対にプロへ行かせるから、お前もその気になってやるように』と言われたんです。最初は『ホントかな』と半信半疑でした。でも一緒にプレーしていた先輩がドラフトで指名されて(スワローズ2位の風張蓮)、プロ野球を身近に感じられるようになりました。僕も監督の言葉を信じて頑張ってみようかなと思ったんです」
そして周東はホークスから育成2位で指名される。ドラフト直後、「目標は支配下登録と盗塁王」と話した周東は実際、プロ2年目の開幕直前に支配下登録を勝ち取り、プロ3年目には育成初の盗塁王を獲得した。
今年はサヨナラ2発を含む5ホームラン
順風満帆だった周東だが、昨年は不振とケガに悩まされ、秋には右肩の手術を受ける。今シーズン初めて一軍に登録されたのは5月末のこと。それでも周東は終盤、サードとしてスタメンに定着。サヨナラの2発(6月18日のイーグルス戦、8月13日のバファローズ戦)を含む5本のホームランを放つなど、バッティングでも存在感を示した。周東がこう話していたことがある。
「プロに入れたのはしっかり振ることを意識したからです。その意識はプロに入ってさらに強くなりました。強い打球を打てないと守る方に怖さを感じさせられませんからね」
強く振るから内野手は下がって守る。そうすると足を活かした内野安打も増えるし、セーフティバントの成功率も上がる。そしてよもやのホームランも飛び出す――俊足という一芸を武器にプロの世界へ飛び込んだ周東は、バッティングを磨いたことで今、輝きを放っているのである。