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トップボートレーサー・守屋美穂32歳が明かす“絶頂期に産休を取るという選択”「正直言って悩みました」
posted2021/03/13 11:02
text by
長田昭二Shoji Osada
photograph by
BOATRACE振興会
ボートレース界を代表するレーサー・守屋美穂は、「養成所時代は落ちこぼれだった」と振り返る。しかし、「頑張れば結果が付いてくる」「頑張らなければ評価されない」「この世界は頑張るしかない」と自分を奮い立たせ、努力に努力を重ねていまの地位を築き上げた苦労人だ。
デビューから14年、紛うかたなき看板レーサーとしての役割を果たし続ける守屋は、この厳しい世界をどう戦ってきたのか? トップ女子レーサーの活躍の秘密に迫る(全3回の2回目/#1、#3に続く)
ウェイトリフティングで全国大会優勝も
約1時間のインタビューの中で、守屋は「頑張る」という言葉を何度も繰り返した。彼女が口にする「頑張る」という表現は、一般に使われるそれとは明らかに重みが違う。
そもそも、なぜボートレーサーを目指したのか?
「小学生の頃は、盲導犬の訓練士さんに憧れていたんです。でも私にとっては現実的ではなかったのかな……。職業としてボートレーサーになろうと考えたのは中学生の頃。父の勧めでした。
子どもの頃にレース場に連れて行ってもらったことがあって、その時の印象は、(舟券の)発売時間はすごく長いのに、レースはあっという間に終わっちゃう、というもの。でも同時に、ボートレーサーってカッコいいなって、どこかで思ったんですね」
高校に入る頃には、職業としてのボートレーサーを意識していた。部活動で始めたウェイトリフティングでは、全国大会の優勝経験を持つ。
「重量挙げを始めたのもボートレーサーになるためです。中学まで本格的なスポーツの経験もないし、走るのも苦手。それに屋外の競技だと日に焼けちゃう(笑)。重量挙げならちょうどいい筋トレになるだろう……と。
いま思うとウェイトリフティングを選んでよかったと思います。瞬発力がついて、下半身が強化できて、全身の使い方が上手くなる。それに精神的にも鍛えられました」
高校を卒業した守屋は、ボートレーサーへの一歩を踏み出すべく、養成所の門を叩いた。
「養成所では、あまりいい思い出はないですね(笑)」
入所資格は15歳から30歳までの男女。学歴や職歴は不問で、全寮制だ。入学試験は年2回。その競争率は平均20倍と狭き門だが、入学後は学費も寮費も食費もかからない。ただし、1年間にわたる訓練と生活は厳しく、そこに男女の別はない。朝6時の起床から夜10時の消灯まで、分刻みの日課を確実にこなし、ボートレーサーに必要な最低限の知識と技術を叩き込まれる。