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「私は時代に恵まれました」主婦レーサー平山智加35歳に聞く“なぜボートレース界で女性は輝いているのか?”
posted2021/03/13 11:03
text by
長田昭二Shoji Osada
photograph by
BOATRACE振興会
自宅で、リモートでのインタビューに応じる平山智加は、事情を知らなければキレイな主婦にしか見えない。しかし彼女は、ただの主婦ではない。ボートレース界を代表するトップレーサーなのだ。
「うちは二世帯住宅なんです」と笑う。取材の途中、玄関のチャイムが鳴り、中座して戻って来た彼女は、笑顔を見せて言った。
「お向かいさんが“白いイチゴ”をくださったんです。ほら、おいしそう!」
子育てをして、家事をしながら、ボートに乗れば男子レーサーと対等に戦い、高額の賞金を獲得する。そして、自分の後に続く若手女子ボートレーサーが活躍できる環境整備に心を砕き、ボートレースという競技の健全な普及に向けてYouTubeでも情報発信を続ける。
八面六臂の活躍を続ける平山智加という選手は、どのようにして作られていったのか。トップ女子レーサーの活躍の秘密に迫る第3弾(全3回の3回目/#1、#2より続く)
先輩ボートレーサーの福田選手は「夫」で「師匠」
「賞金女王決定戦(現:PG1クイーンズクライマックス/当時G1)」(2013年)や「PG1レディースチャンピオン」(2020年)など数多くの重賞レースを制覇してきた平山には師匠がいる。夫で先輩ボートレーサーの福田雅一選手だ。
夫婦であり師弟でもあるという関係は、昨年のボートレースのCMでの新人女子レーサー(武田玲奈)とベテラン選手(飯尾和樹)の関係を思い出させる。CMは「ハワイで挙式をぶち上げる!」で終わったが、福田と平山は結婚した後も活躍を続けている。
「ひとくちに師弟関係と言ってもその形態は色々で、特に決まりはないんです。ちゃんとスーツを着て自宅を訪ねて、『弟子にしてください!』ってお願いする人もいれば、何となく周囲から『あの二人は師匠と弟子なんだな』って認識される関係の人もいます。
うちは17歳の年齢差があるんです。私がこの世界に入ったころ、主人はすでにピークを迎えて“大御所”の風格がありました。20歳の私の目には、選手として尊敬できて、男性としても魅力的で、すべてがカッコよく見えたんです。憧れの存在でした」
二人の“師弟関係”が始まった経緯はちょっと変わっている。
「先に交際が始まって、あとから師弟関係になっていった感じです。正式に入門したわけでもないし、もしかしたら主人は私のことを弟子だと思っていないかもしれない(笑)。ただ、レースの組み立てからモーターの整備まで、ボートレースに関するあらゆることを教えてくれたのは主人だし、いまでも教えてもらっています」