Number ExBACK NUMBER

25歳女王・大山千広が“ボートレース界のトップを狙い続ける”理由「自分が男だったらって思うこともあるけど…」 

text by

長田昭二

長田昭二Shoji Osada

PROFILE

photograph byBOATRACE振興会

posted2021/03/13 11:01

25歳女王・大山千広が“ボートレース界のトップを狙い続ける”理由「自分が男だったらって思うこともあるけど…」<Number Web> photograph by BOATRACE振興会

2018年の最優秀新人、2019年のレディースチャンピオン獲得など輝かしい経歴を持つ25歳の女王・大山千広選手

「ボートレースの“人としての礼儀”を重んじる面も私は好きで、例えばレースが終わって陸(「おか」=競走水面以外の地上の総称。特にピットを指すことが多い)に上がると、一緒に走ったすべての選手に挨拶をする決まりがあります。道中(=レース中)、先輩の後ろを走った時は『ありがとうございました』、先輩より前を走った時は『失礼しました』。

 レース中に、たとえ故意にではなくても危険な状況を作ってしまったときは、何をおいてもまずそのお詫びをします。これは先輩後輩の関係なく、先輩が後輩に水をかけてしまったときなども、『ごめんね』と謝るんです」

「恐怖の方が大きい」体感時速120kmの世界で

「水上の格闘技」の異名をとるボートレース。最高時速は80kmを超え、レーサーの体感速度は120kmに達するなか、落水や転覆の危険性とも常に戦わなければならない。

「ボートに乗るのは楽しいけれど、正直レース中は恐怖のほうが大きいです。レース後に『あの時は紙一重だったな……』と思ったことは数えきれません。

 派手なアクシデントのほうが、事故の中心にいる当人は冷静だったりするんです。意識がスローモーションになる(笑)。『ああ、落ちるんだな』と、意外なくらいに冷静なんだけど、どうすることもできない。意外とお客さんの声も聞こえたりして」

「『自分が男だったら……』って思うことはありますよ(笑)」

 ボートレースにはファンの投票によって出場資格が与えられるレースもある。そこでも大山は、圧倒的な人気を誇る。5月にボートレース若松で開催される「SG 第48回ボートレースオールスター」のファン投票でも、全体で3位(女子では1位)だった。

 スポーツの中でも数少ない「男女混合で競う」ボートレース。女子レースもあるなか、男子に交じって優勝を競うレースもある。女子のトップレーサーとして戦う大山は、そのあたりをどう考えているのだろうか?

「女子だけのレースでは『勝たなきゃいけない』という思いが強くて、どんなにモーターの調子が悪くても『結果を出そう』と考えています。男子より女子が有利な点は『体重の軽さ』だけ。それ以外の面ではやっぱり男性には敵わない。『自分が男だったら……』って思うことはありますよ(笑)」

 男女の体格や体力の差を意識せざるを得ない瞬間の連続に身を置く女子レーサー。硬い水面の上を猛スピードで走っていくボートは、傍目から見る以上に暴れている。それをうまく操るには、ボートを押さえつける力は重要な要素になってくる。

【次ページ】 「挑戦できるのは女子レーサーの特権だから」

BACK 1 2 3 NEXT
大山千広

他競技の前後の記事

ページトップ