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中学恩師が語る“初心者”八村塁。~NBAという夢の始まり~
posted2020/11/25 08:00

異彩を放っていた八村に「NBA」という夢を与えたコーチがいる
text by

青木美帆Miho Aoki
photograph by
AFLO
私が塁を知ったのは、彼がまだ小学生のころ。知人が指導するチームに2日間だけ顔を出したんです。当時から飛び抜けて背が高くて「これは将来が楽しみだ」と思ったんですが、その後野球チームに入ったと聞き、残念だったのをよく覚えています。
塁は6年生のときはキャッチャーだったんですが、元々はピッチャー。あいつの球を受けられる同級生がいなくて、仕方なく転向したんだそうです。奥田中の野球部は塁が中学2年生の時に全国2位になるほどの強豪でしたし、中学でも当然野球を続けると思っていたんですが、仮入部期間が終わっても、野球部に入っていないという。それならば、と、バスケ部員たちに「絶対に連れてこい」と指令を出しました。
彼らからのしつこい勧誘に負けた塁は、外履きのバスケットボールシューズで体育館に現れました。特別扱いせず、先に入部した同級生たちと同じメニューに取り組ませると、素人ながらそれに必死についていきました。ただ、床にあるボールをはたき上げてドリブルに移行する「ボール起こし」というメニューには苦戦した。うまくいかないものだからボールを拳で叩き出したので「八村くん、それは反則だよ」と声をかけたら、涙目になっていてね。どうしたものかなと思い、ふと、「君、手が大きそうだね。ひょっとしたらボールをつかめるんじゃないか?」と言ったら……あいつは戸惑いながら片手でボールをパッと持ち上げたんです。普通の中学生には絶対にできませんよ。「こいつ、すげえ!」って素直に思いました。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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