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摂食障害と鬱病から回復中、グレイシー・ゴールドが残した重い言葉【スケートアメリカ】
posted2020/10/28 11:01
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
ネバダ州ラスベガスで開催されたスケートアメリカで、ウォームアップに出てきたスケーターたちを、モニター越しに見るのは新鮮な思いだった。
未だにCOVID-19の感染率が改善の兆しを見せない北米において、スケーターたちはどこまでコンディションを保っているのか、未知数だった。
だがフィットした体形に美しいコスチュームをつけて淡々と滑る選手たちを見ていると、わずかな間だけでも、世の中がノーマルに戻ってきたような気持にさせてくれた。
選手の移動を最小限にするために、ほとんど国内大会と同じようなメンバーで開催されたこの試合。だがどの選手もしっかり演技を仕上げてきており、見ごたえのある戦いだった。
4年ぶりの挑戦、マライア・ベルが優勝
女子の戦いを制したのは、24歳のマライア・ベルだった。2016年に比較的無名だった彼女がこの大会で2位に入って注目を浴びて以来、4年ぶりの挑戦でみごとに優勝を射止めた。
SPはアダム・リッポン振付の『Glitter in the Air』。用意してきたSP用の衣装が着心地が馴染まなかったため、SPもフリーの衣装を着て挑んだ。
「観客席には人型のカットアウトが置いてあるし、元々普通の状況ではないので、何でもありで良いかなと思ったんです」と笑う。
2アクセル、3フリップ+3トウループ、3ルッツとミスなくきめて、スピンもステップも全てレベル4を獲得。特に1つ1つのスピンのポジションが完成されていて、人を惹きつける美のある演技だった。
翌日のフリーは、シェイリーン・ボーン振付のアバのメドレー。2アクセル+3トウループ、3ルッツ+2トウループなど無難にきめていったが、最後の3ルッツが回転が足りずに転倒し、フリーでは136.25で4位になった。とはいえフリー1位のブレイディ・テネルとの点差はわずか1.53という接戦で、総合212.73で1位を保った。
「ここで滑ることが出来た私たちは、本当に幸運でした」と、GP6大会中、2大会が中止になった中で、スケートアメリカが無事に決行されたことへの感謝の言葉を口にした後で、「今日の演技はちょっと安定せずに動きが硬かったけれど、競技の場でフリーを滑ることができて良かった。とても楽しみました」と言葉を結んだ。