フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
昨季は弟の死、今季は唯一のカナダ代表…メッシングが重圧の中、スケートアメリカ銅メダル
posted2020/10/27 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
「ぼくたちは、可能だとは予想していなかったこのような機会に恵まれて、とても運が良いと思っています。オーリンズ(アリーナ)も、全米フィギュアスケート連盟も、この大会を実現させるために多大な努力をはらってくれました。心から感謝しています」
10月23日からネバダ州ラスベガスで開催された2020年GPシリーズ初戦スケートアメリカで、ネイサン・チェンはZoomの会見でこうコメントした。
3月にパンデミックの影響でモントリオール世界選手権が中止となり、今シーズンもどうなるのか危ぶまれていた中で、ISUは様々な条件を付けた上でシニアGPシリーズの決行を発表した。
国境を越える旅が規制されている現在、各大会は主催国の選手、あるいはその現地でトレーニングをしている選手に限定。ジャッジも同様でほぼ国内大会というメンバーで開催されたものの、予想以上に充実した面白い大会となった。
「バブル」で行われたスケートアメリカ
昨シーズン、満席となったオーリンズアリーナは、今年は代わりにファンたちの等身大の写真をあしらった人型のカードボードが並んでいた。中にいるのは、選手とコーチ以外はマスク姿のジャッジやテレビ放映の技術スタッフなど、最低限の関係者のみである。
テニスのUSオープンなどでも使われた「バブル」のシステムがここでも採用された。関係者は到着後にPCR検査を受け、陰性の結果を受けた後は、会場とホテルの往復以外の外出、他者との接触は一切禁止という厳しい条件下である。
筆者は1993年からスケートアメリカを取材してきたが、今年はたとえ現地に行っても選手やコーチへの取材はZoomを通してのみと聞き、リモート取材を選んだ。
全米中のアイスリンクは、ロックダウンの3月から6月末まで閉鎖されていた。振付もZoomを通して行った選手たちも多く、いったいどのくらいまで調整ができているのか予測できない。だがそんな懸念を吹き飛ばしてくれた、選手たちの演技だった。
我々凡人は巣籠り中、体重増加と格闘していたが、スケーターたちの間ではそんな気配は皆無であった。どの選手もすっきりとした体形にコスチュームを着けて登場した。