フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
摂食障害と鬱病から回復中、グレイシー・ゴールドが残した重い言葉【スケートアメリカ】
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2020/10/28 11:01
4年ぶりに出場したスケートアメリカで、見事に優勝を飾ったマライア・ベル
ゴールドの残した重い言葉
こうした華やかな戦いの中で、心に重いものを残したのはグレイシー・ゴールドの言葉だった。
摂食障害と鬱病の治療を受けて回復中の彼女にとって、4年ぶりのこの大会である。
全盛期ほどではないにしろ、かなり体形を戻してきてウォームアップでは以前のような高いルッツを跳んでいた。だが本番ではSP、フリーともジャンプミスが連続して、12人中12位という厳しい結果に終わった。
「パンデミックの影響は、あまりなかったです。家に引きこもってテレビを見る毎日は、鬱病になった時の生活と同じ。私にとってはすでに馴染み深いものだったので」
淡々とそう口にしたゴールドの言葉に、誰もどう反応してよいのかわからず、しばらく沈黙が流れた。アメリカの記者が「多くの人々があなたを応援しているけれど」とエールでフォローしたが、ゴールドはそれに反応する元気もないほど、気落ちしている様子が見て取れた。
「私は完璧主義者なので、ここでの自分の演技は全く評価できません。コーチたちと、またたたき台から計画練り直しです」
一時はゴールデンガールと注目され、五輪の金を取ることも期待をされていたゴールド。あれほどの才能を持っていただけに、今の自分が受け入れられないのに違いない。
コーチたちの力を借りて、再び彼女の笑顔を氷上で見られる日が来ることを願ってやまない。
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