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<永世名人の慧眼>中原誠が語る18歳の羽生と藤井。
posted2020/09/14 07:30
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Miki Fukano
羽生善治の名が日本中に知れ渡ったのは、18歳の若さで名人経験者相手に4連勝、決勝で中原を破った'88年度のNHK杯だった。あれから30余年、新たな18歳の新星が棋界を燦然と照らしている。大名人の目に、2人はどう映るのか。「棋界の太陽」は、静かに笑みをたたえながら話してくれた。
「年間100局をノルマとして、プロの碁を盤上に並べています。成果? フフ、もちろん上がっていて、碁は強くなったと思います。歩くこと以外には不自由がないので、原稿も自分で書いていますし、競馬も相変わらず見て、馬券も少し買っているんですよ。ほかはやっぱり将棋を見ること。ネットの生中継が面白くて、藤井さん(聡太二冠)の将棋は引き込まれるように見てしまいます」
中原誠十六世名人は2009年、竜王戦のランキングで最高位の1組に在籍したまま、病気を理由(脳出血の治療中に大腸ガンが見つかった)に61歳の若さで表舞台から静かに姿を消した。
あれから11年あまり、健康状態が気になっていたのだが、「フフ」と小さく声に出して微笑む話し方は、憧れの絶対名人そのまま。古くからの将棋ファンしか知らない「棋界の太陽」のニックネームがしっくりした形で戻って来て、それだけでうれしくなってしまった。
藤井が更新するまで、タイトル挑戦(17歳10カ月24日)とタイトル獲得(18歳6カ月)の最年少記録保持者は屋敷伸之(当時五段。現九段)だった。'89年、'90年と、その屋敷の挑戦を受けたのが、当時棋聖の中原である。屋敷との年齢差は24。30年前の年の差対決について振り返ってもらった。