甲子園の風BACK NUMBER
高校生ドラフト候補が躍動。甲子園での合同練習会に早くも「来年もあるべき」の声。
posted2020/09/03 08:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
球界初の試みは実りあるものとなった。
8月29、30日、甲子園球場で「プロ志望高校生合同練習会」が開催され、西日本地区から参加した77名の球児が躍動した。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、春の選抜や各都道府県の春季大会、夏の選手権大会と地方大会が中止となった。そこで、プロへのアピールの場が大幅に減ってしまった高校3年生のために、日本高等学校野球連盟とNPB(日本野球機構)がタッグを組み、今回の合同練習会が実現した。
日本高野連の小倉好正事務局長は、改めて経緯をこう振り返った。
「今年は生徒たちが自分の実力を見てもらう機会が非常に少なかったため、生徒の進路保証につながる取り組みができないものか、ということが話題にあがり、NPBとのご相談の中で今日の日を迎えることになりました」
練習会は甲子園(西日本)と東京ドーム(東日本)の2カ所に分けて行い、東日本地区は9月5、6日に開催される。西日本の参加者が77人、東日本が41人と、西日本が圧倒的に多かったのは、甲子園が会場となっていたことも影響したと思われる。
ほとんどの参加者にとって初めての甲子園。光泉カトリックの投手・森本修都が、「初めて甲子園のグラウンドに足を踏み入れたので、気持ちがたかぶりました」と話したように、憧れの地でアピールできることに、球児たちは喜びを噛みしめた。
スカウトたちが見るのは「姿勢」。
初日はフリー打撃とシートノック、2日目は実戦形式のシート打撃が行われ、初日はNPB12球団から83人、2日目は96人のスカウトが視察に訪れた。また、スカウト活動の公平性を保つため、大学や社会人、独立リーグのスカウトも入場が許可された。
シート打撃はカウント1-1から、投手は打者5人、打者は投手3人と対戦。ドラフト上位候補と前評判が高く、今回の練習会でただ1人150キロを記録した山下舜平大(福岡大大濠)や、加藤翼(帝京大可児)、内星龍(履正社)といった投手がインパクトを残した。
一方で打者は苦戦する選手が多かったが、広島の鞘師智也スカウトは、「今回のシート打撃でバッターが打つのは非常に難しいと思う。1-1のカウントから、何も情報のないピッチャーを相手にいきなり結果を出すのは厳しい。ただ、そこに対してのアプローチといったところをみんな見ていたと思う」と語った。
ソフトバンクの城島健司球団会長付特別アドバイザーも初日に、「ホームランを何本打ったとか、ヒット性の当たりを何本打ったというのを見ているわけじゃない。立ち振る舞いや走っている姿、ティーをしている姿というものを見ている」と話していた。
そうした意味では、シート打撃で守備についた際、奥村真大(龍谷大平安)がサードの守備位置から、絶えず投手を盛り立てる声を出し続けていた姿が印象的だった。