スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
久保建英の現状は「かわいそう」。
後輩を慮りつつ充実の香川真司。
posted2020/01/29 11:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Daisuke Nakashima/AFLO
もう少し、いい条件で見たかった。
30歳の香川真司と18歳の久保建英。日本を代表する新旧アタッカーの初競演である。
サラゴサが3-1で制したこの試合。残念だったのは、2部のサラゴサが1部のマジョルカを破ることが予想通りと言えてしまうほど、サラゴサ有利の条件が揃い過ぎていたことだ。
まず火曜19時キックオフという日程。日曜12時にリーグ戦が組まれていたマジョルカに中1日で試合をさせるなんて、嫌がらせとしか思えない。
2日前の1月19日。降格圏の18位に沈んでいたマジョルカは、冷たい雨と強風が降りしきる悪天候の下、強豪バレンシアを相手に今季最高と言うべきパフォーマンスを発揮。久保が初ゴールを挙げた昨年11月10日のビジャレアル戦以来となる白星を手にしていた。2カ月以上を経て、7戦ぶりの勝利である。もう少し堪能する時間をあげてもよいではないか。
主力温存の被害をもろに被った久保。
その翌日。ビセンテ・モレノ監督が発表した招集リストには、正GKのマノーロ・レイナも最終ラインの要ライジョも、中盤を支えるババも司令塔サルバ・セビージャも、チーム得点王のブディミルもいなかった。
先発メンバーは潔くもバレンシア戦から総入れ替え。そのうちリーグ戦でコンスタントにプレーしているのは久保と右SBのサストレくらいで、他は1月中の放出もあり得るか、ベンチ入りもままならない選手が大半を占めた。
これではバレンシア戦の勝利で得た勢いもクソもない。
サラゴサが60%以上のボール支配率を記録したこの日、マジョルカは自陣低めにコンパクトなブロック守備を敷くことで、前半は押し込まれながらもスコアレスを保つことができた。
問題は守備位置が低すぎたため、ボールを奪ってもそこから攻撃に繋げることができなかったことだ。
そしてその被害をもろに被ったのが、前線でアブダン・プラッツと2トップ気味に並んだ久保である。