ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
右手にパッション、左手にロジック。
J2首位・松本山雅の“ソリイズム”。
posted2018/08/14 08:00
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
J.LEAGUE
右手にパッション、左手にロジック。
いまも昔も“ソリイズム”は変わっていない。J2松本山雅を率いる反町康治監督のことだ。
サッカーは情熱だけでも、理屈だけでも勝てない。情(パッション)理(ロジック)を尽くし、天命を待つ。指導者へ転じて以来、そうしたスタンスを頑なに守ってきた。
松本山雅の指揮官に就任して7年目。いまもって千客万来のチーム事情は変わっていないが、常に「反町色」に染め上げていく。もちろん、今季もそうだ。
27試合を消化し、積み上げた勝ち点は53。資金力やタレント力で上回る他クラブを出し抜いて堂々トップを走る。先週末は戦力面で勝るジェフ千葉を相手に見事な逆転勝ち。まさにソリイズム全開の戦いぶりだった。
見てのとおりで、止める・蹴るという力では、かなりの差がある――とは、反町監督の弁だ。テクニック(技術)では分が悪い、というわけである。目下、1試合平均のボール保持率(データは第27節終了時点)は43.9%。下から2番目だ。
闘い抜き、走り切るための情と理。
それでも、指揮官は言う。
我々にしかないモノがある――と。千葉戦では、その強みを十全に生かして勝利をたぐり寄せた。言わば、闘い抜く力、走り切る力だ。そこに例の「ロジックとパッション」が絶妙に絡みついている。そのあたりが、いかにも反町監督のチームらしい。
実のところ、準備してきた千葉対策の半分は空転していた。相手の得意な攻め手を封じる5-4-1の人海戦術だ。千葉は圧倒的なボールポゼッションを背景にワイドオープンから崩しにかかる。そこで両サイドにフタをして、敵の進撃をやり過ごす算段だった。
「効率よく守るために準備したが、腰が引けた感じで、チームの重心が後ろに引っ張られてしまった」(反町監督)