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スペインが涙した「宝くじ」PK戦。
先例やデータは本当に役立つのか。
posted2018/07/05 17:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
「PK戦は宝くじ」
すなわち、運で決まるもの。これはスペインでしばしば耳にしてきた“言い伝え”だが、昨今はこれを否定する声が大きくなっている。細やかな調査やデータ分析の結果、PK戦の勝利を引き寄せる秘訣がわかってきたからだ。
よく知られているのは、先攻が有利だということ。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのイグナシオ・パラシオス・ウエルタ教授が協力者と共に1970年から2000年までの主要国際大会のPK戦記録2820件を調べたところ、先に蹴ったチームの勝率は60%で、シュート成功率73%も後攻を4%上回っていた。
教授の解釈によると、「後手に回る心理的なプレッシャー」が後攻のパフォーマンスに明らかな影響を及ぼしており、そうした事実を、選手たちも本能的(あるいは経験的)に理解していたそうだ。
GKのデータ収集、統計・確率の活用。
次に、練習と研究。
キッカーに関しては視線や助走、蹴るタイミングなどに押さえるべきポイントがあり、蹴るまでの一連の動作をルーティーン化することがシュート成功率を高めるとされている。
他方、GKはデータの収集が鍵になる。
2006-07シーズンのUEFAカップ決勝のPK戦において、相手キッカー3人のうち2人のシュートを止めた元セビージャのGKパロップは言う。
「俺の場合、対戦相手のキッカーの情報はすべて頭に入れていた。その上で決勝戦だからリスクは冒さず、いつもと同じ方向へ蹴るはず、といった判断を下していた」
最後は統計・確率の活用である。
アメリカABCニュース配下のデータ分析サイト「FiveThirtyEight」が、PK戦の進行に伴う勝利の可能性の変化をチャートにまとめている。