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スペインが涙した「宝くじ」PK戦。
先例やデータは本当に役立つのか。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2018/07/05 17:30
代表引退を表明したイニエスタ。今後の活躍の場はJリーグとなる。
スペインはPK戦への抜かりはなかった。
サイトによると、相手よりも優れたキッカーやGKを擁するチームが後攻となったとき、先攻1人目がシュートを外した時点で後攻勝利の確率は約50%から77%に跳ね上がる。
こうしたデータを知っていると、コイントスに敗れて心理的に不利な後攻めになっても、平常心を保てるかもしれない。
また、W杯2014年大会までの全PK戦から導き出されたデータでは、8人目(後攻4人目)のシュート成功率は58%で、計10人中で最も低いことがわかる(平均成功率は71%)。こちらも、キッカーの順番を決める際に考慮すべき数字だ。
さて、こうしたデータをすべて踏まえて、スペインのロシア戦でのPK戦を振り返ると、改めて一筋縄ではいかないことを思い知る。
まず、コイントスで選択権を得たセルヒオ・ラモスは、迷わず先攻を選択した。
練習していたかどうかはともかく、GKデヘアにはある程度の情報が渡されていたとして、キッカーの選択と順番はデータ面からも間違ってはいなかった。
コケ、I・アスパスも信頼が厚かったが。
失敗は許されない1人目のイニエスタと、先述の8人目にプレッシャーをかける7人目のS・ラモスは、過去の代表戦でPKを決めた経験を持ち、3人目のピケと5人目のコケも国際的な大舞台に慣れている。さらには、9人目のイアゴ・アスパスのリーガ1部でのPK成功率は92.3%だ。
そこにスペインとロシアの総合的な実力差を加味すると、より準々決勝に近かったのは間違いなく前者のはずだった。
ところが、実際のところはシュート成功率が最も高いはずの5人目(コケ)が止められ、イアゴ・アスパスも決められず、万事休した。