Number ExBACK NUMBER
隈研吾が語る新国立のビジョン。
「大地と森に溶けこむように」
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2017/11/01 16:00
五輪とスタジアムに関して大いに語って下さった隈氏。同じく建築家の西田氏(写真右)は、横浜スタジアムの改修を手掛けた建築家。
五輪後も考えて作った「木」のスタジアム。
「いまレガシーが叫ばれていますが、オリンピックが終わった後、どういうキャラクターを残すか考えています。新国立競技場のキャラクターがはっきりしていないと、後々の人は国立代々木競技場のようには評価してくれないでしょう。その意味で私の場合は木を使っています。木という素材がここまで感じられるスポーツ施設は世界にない。杉を多く使うと匂いもします。それらも含めた明確なキャラクターがあれば、後々いろんな使い方のアイデアも湧いてくると思います。いろんなエンターテイメントで使われる可能性も広がっていくはず」
今度は同席していた西田司氏が尋ねた。池田氏とともに横浜スタジアムの改修を進めてきた建築家だ。
「ベイスターズでボールパークを一緒に作って考えたのですが、その施設でどのように日常のコミュニティが作られるのか、というのも大切なポイントだと思います。新国立競技場の日常的な部分については、どのくらい仕込まれているのでしょう?」
自身は東京五輪後、建物への感激のあまり自宅のある横浜から国立代々木競技場のプールまで毎週通っていたという隈氏。今回は低く水平に伸びる木のスタジアムが、神宮の杜のなかに溶けこむようにつながっていく姿を目指すという。
「新国立競技場の前にはせせらぎや植込みを作って、子どもたちがそのまわりで遊べるようなものにしたいです。そして高さを抑えた建物が大地と森に溶けこむように。建物のわきには大きな木があって、それがどう森につながっていくか。これから10年、20年経ってくると、植えた木が大きくなって、緑の連続性が生まれてきます。スタジアムができたことで神宮の杜がより深くなってくるといいなと思っています」
木を使ったインパクトある新国立競技場。競技場だけではなく、森も含めた建築物。東京五輪で神宮の杜を訪れた子どもから、新たな隈研吾は誕生するだろうか。
▶「Number Sports Business College」の詳細はこちらから