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前田健太は他の日本人投手と違う!
投げない調整、中5日でMLB向き?
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAFLO
posted2016/01/28 10:40

ついにメジャー挑戦を果たした前田健太。27歳、まさに全盛期と言えるタイミングだ。
前田の適応能力が発揮された2013年のWBC。
その調整法の効果が発揮されたのが、2013年のWBCだ。
多くの選手がWBC専用ボールの扱いに苦慮しながら投げ込みを続ける中、前田だけは調整を全く変えなかった。
宮崎で行われた直前合宿の初日から2日間、前田は先発投手陣の中で唯一ブルペン入りをしなかった。そのことで、前田に故障が発生したのではないかとメディアは騒ぎたてたが、前田は意に介すことなく「投げない」調整を続けたのだった。
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そして本番のWBCでは、エース・田中将大(当時楽天)の不調をカバーして余りある活躍を見せ、大会の公式ベストナインにも選ばれた。チームは3連覇こそ達成できなかったが、投げ込みをしない彼独自の調整法の有効性が垣間見えた大会だった。
前田の「習慣」ともいうべきそのスタイルが、メジャーリーグの投げない調整法に合致する。そんな期待が湧く。
中6日で投げてこなかった、というアドバンテージ。
習慣という意味では、もうひとつある。それは登板間隔についてだ。
日本人のメジャー挑戦において、常に危惧されるのが中4、5日で回すメジャーリーグのローテーションだ。ダルビッシュ発言が物議をかもしたことを記憶している人もいるだろう。中6日でローテーションを回す日本から中4、5日のメジャーに移ることは、体の負担が大きいといわれている。
当然である。何日の登板間隔がベストなのかをさておくにしても、習慣が変わることは誰にとっても危険性がある。それまで中6日の登板間隔で7、8年も過ごしていたのだから、身体に異変を感じることは避けられない。
メジャーリーガーも、突然中6日の登板を始めたのではなく、マイナーで地道なトレーニングを積み重ねながら中4、5日のローテーションを経験し、それを乗り越えてメジャーに上がってきているのだ。
そして、前田である。広島での彼は、「絶対中6日」の投手ではなかった。
中5日で先発した試合が一番多く、中6日、イレギュラーなことによる中7日、中4日とその数は続く。優勝争いなどで登板間隔を短くしたこともあったが、もともと中6日だと「変に体が緩んでしまう」と感じ、中4日や5日での調整を好んでいる。
つまり前田には、これまで日本人投手の懸案の一部とされてきた、メジャーの投げ込まない調整スタイルやボールへの順応力、登板間隔という問題に対して、うまく乗り越える可能性がある。