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前田健太は他の日本人投手と違う!
投げない調整、中5日でMLB向き? 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2016/01/28 10:40

前田健太は他の日本人投手と違う!投げない調整、中5日でMLB向き?<Number Web> photograph by AFLO

ついにメジャー挑戦を果たした前田健太。27歳、まさに全盛期と言えるタイミングだ。

故障の可能性はもちろん否定できないが……。

 懸念されるのは、契約問題でも明るみになった故障の危険性だ。

 もちろん、前田が故障する可能性はゼロではない。彼は長年にわたってエースとして広島カープを引っ張ってきたし、2013年以降は侍ジャパンの顔としてもマウンドに立ち続けてきた。昨シーズンに至っては、年間3000球を投げた上にプレミア12にまで登板している。リスクが高まって当然といえよう。

 しかし重要なのは、故障を恐れることではない。誰もが抱える故障のリスクを直視したうえで、それを絶望的な事態だと思わないことだ。

 自らも手術経験がある吉井理人氏が、アメリカでの手術について「虫歯を治すような感覚だ」と語っていたことがある。その背景には、トミー・ジョン手術の成功率に代表されるように、医療技術の高さと緻密に練り上げられたリハビリメニューがある。故障を長いキャリアの中で起こりうる事態と捉え、むしろ選手として、人として大きく飛躍させる絶好の機会にしようとしている感さえある。

 事実昨シーズンは、若くしてトミー・ジョン手術を受けた、マット・ハービー(メッツ)とホセ・フェルナンデス(マーリンズ)が見事な復活を遂げた。今季中に復帰が予定されているレンジャーズのダルビッシュ有にしても、15勝という予測がたてられているほどだ。

8年契約は、前田にとって大きなメリットになる。

 そんな長期的な展望を描くうえで、前田にとって圧倒的に不利だとされた8年という長期契約はプラスに働いてくる。

 8年というのは、たとえ投げられない時期があったとしても、それを身体を作り直す時間にあてて復活を目指すのに十分な時間だ。当然、故障がなくスムーズに成功を収めることが一番良い。しかしそうでなくとも、前田には十分なチャンスと時間がある。

 メジャーに行って変わる。また一つの成長ができる。

 日本人投手がメジャーに行くとつぶれるという風評を覆すような前田の適応能力に、新たなる希望を感じている。

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前田健太
ダルビッシュ有

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