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アビスパは過去の3位とここが違う!
井原監督と選手の“共通意識”とは。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/11/30 12:10
リーグ最終盤の12戦で無敗、8連勝の勢いでプレーオフに臨んだ福岡。このままJ1昇格まで突っ走るか!?
ウェリントンは守備でも高い意識を見せた。
こうして立ち上がりからトップギアで仕掛けた福岡は、城後のボレーシュートによる13分の決定機を皮切りに、長崎の堅い守備ブロックを崩す作業を丁寧に続けていく。
その際、大きな任務を担ったのはエースのウェリントンだった。
敵のマークを一身に受けながら空中戦で競り勝ち、高いキープ力で2列目の攻撃参加を促していたが、攻撃面での貢献と同じくらい高かったのが、守備意識だった。長崎にボールがわたれば、最前線から自陣まで戻って、守備に何度も加わったのだ。
コーナーキックで決勝点を演出した末吉隼也は、目を細めて言った。
「ウェリがあれだけ追いかけてくれれば、後ろの選手はやるべきことをやらないといけないっていう気になりますよね。一人ひとりが戦う姿勢を示し、チームのために守備ができるか、攻撃ができるか。それがアビスパの色だと思うし、井原さんが普段から口にしていることなんです」
'10年から福岡に3シーズン所属し、その後サガン鳥栖、大分でプレーし、再び地元のクラブに復帰したボランチはさらに続ける。
「監督は守備の選手だったので、『良い守備から良い攻撃』というのを常に言われるし、守備をしない選手は試合で絶対に使わない、とも言われます。『全員守備・全員攻撃』という意識が徹底されてきて、ゼロで抑えられる試合が増えてきたので、僕らも自信を持ってやれている。その初心を忘れたら、結果は出ないと思うので、1試合、1試合ハードワークするだけだと思っています」
「全員攻撃・全員守備」とは言わなかった。その順序にこそ、このチームが何を大事に戦ってきたかが示されている。
決勝の相手は「復帰しなければならない」セレッソ。
5位・愛媛FCと0-0で引き分けた4位・セレッソ大阪が決勝の相手になったことを受けて、亀川が力強く言った。
「セレッソには、あれだけのメンバーがいて、1年でJ1に復帰しなければいけないというプレッシャーがあると思う。自分たちは3位で終えたけど、チャレンジャーの気持ちで戦わなければならないと思っています。個の能力を見ても、引いてしまうとやられるのは分かっているので、失うものは何もないという感じで真っ向勝負を挑みたいと思います」