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3バックのサイドと永井謙佑の速度。
システムは選手の力を生かすために。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/15 10:30
永井謙佑のスピードをどう使うか、という問いに西野朗が出した答えは、サイドを一気に駆け上がらせるというものだった。この実験はどんな結果を導くのだろうか。
ハマれば超威力。しかしすぐに対策も。
その布陣がハマった試合は、5月2日に行なわれた名古屋vs.湘南だった。
左サイドハーフで先発した永井は前半35分、右サイドのクロスに走り込んで先制点を挙げる。直後には自慢の俊足を活かしたドリブルから、ポスト直撃のシュートを放つなど、走る「量」で勝負する湘南のリズムを完全に削いだ。
「(サイドハーフを任された)最初は余力がなかったですけど、徐々に体が慣れてきてます。前よりはシュートシーンに行くまでにパワーが残っていて、周りを見る余裕もあります。そこ(サイド)から出ていって得点も決められました」
試合後に、永井は充実した表情で語った。
ただ、「サイドハーフ・永井」がすぐに安定して結果を残せるほど、J1の舞台はヤワではない。
続く横浜FM戦、川崎戦では相手に対策を練られ、持ち前のスピードを見せつける場面は数えるほど。放ったシュートも2試合とも1本のみに終わり、名古屋としては翼をもがれる形となった。
そんな永井だが、川崎戦のLIVEトラッキングのデータでは、両チームナンバーワンのある数字を叩き出している。
トップスピード33.9kmと、スプリント回数34回。
抑え込まれた上でもこれだけの数値を叩き出すのだから、湘南戦のようにチームのサポートを受けられれば、相手にとって脅威であることは間違いない。
サイドハーフ永井が輝くための「条件」。
では、サイドハーフ永井が輝くために、何が必要なのだろうか。
再び、湘南戦後の永井の言葉だ。
「やっぱり前線でボールが収まるかどうかですね。そこで収まらないと、思い切っていくことは難しいです。後半は収まっていなかったから。オレらサイドの選手は、前向きの状態でバーッと勢いよく出ていくんですけど、もしそのタイミングでボールを失ってしまうと、(自分が)相手の選手を後ろに置き去りにした分、相手が前線に残っている状態になってしまいます。そうなると守備の人数が足りないし、後追いをしなければいけなくなります」
類稀なスピードという“個の力”があっても、それを活かすための土台には周囲との連動性が必要なのだ。確かに川崎戦では、ノヴァコヴィッチらを起点にして左サイドから爆発的なスピードで飛び込んでくる永井の姿は見られなかった。
最前線だけではない。2列目や中盤の選手のサポートでも同じことが言える。
「中に入れ込んでいく方がサポートがいますから。ボールを預けて中に入れば、(矢田)旭だったり、(松田)力がいました。自分も生かしてもらいながらやるのが、リズムや流れも出ますよね」