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ACL敗退、Jでも不調、苦悩の鹿島。
育成主義が直面した壁と世代交代。
posted2015/05/13 10:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
5月10日。味の素スタジアム。
4分間のロスタイムを経て、ゲーム終了を告げる笛が鳴ったとき、赤いシャツを着た多くの人間が深い安堵を感じていた。
前半34分に決まった土居聖真のゴールを守りきり、鹿島アントラーズが好調FC東京相手に完封勝利を収めたのだ。2月25日のACLグループリーグ初戦から数えて、今季16試合目にして初めての完封。1-0という結果だけを見れば、「試合巧者」と呼ばれ続ける鹿島の持ち味が発揮されたスコアだが、その内容に王者の余裕はなかった。
前半の鹿島は攻守に渡りFC東京を圧倒し、相手のシュートを1本に抑えた。しかし後半は、シュート数こそFC東京4本に鹿島5本と上回ったものの、9本ものCKを与えている。ポストやバーに当たる運にも恵まれて、身体を張ってどうにか自陣を守り抜いた形だ。数回訪れた好機は活かせなかったものの、アディショナルタイムに浴びせられた3本のCKをも防ぎきり、逃げ切った。
「相手の運の無さに多少助けられた部分もある。自信を持って『無失点で抑えられた』という試合ではないが、この試合をリスタートとしたい」
試合後の柴崎岳のコメントが、鹿島の現状を物語っていた。
優勝候補だったはずが、中位をさまよう。
2014年シーズンを3位で終えた鹿島は、当然のように優勝候補の一角として2015年シーズンを迎えた。
しかし、Jリーグ開幕前のACLで2連敗。そして迎えたリーグ開幕戦はベテランの小笠原満男や曽ヶ端準をスタメンから外し、スタメン平均年齢が24.45歳という若返りを図る荒療治で臨んだ。しかし、昨季残留を争っていた清水エスパルスに敗れる。昇格組の湘南ベルマーレとの第2節も落とし、開幕2連敗。第9節終了時点で、3勝2分4敗の10位と出遅れた。
ACLでも開幕から3連敗を喫し、その後の2連勝でグループリーグ突破の望みを最終節につなげたものの、5月5日FCソウル戦で2-3と敗れて決勝トーナメント進出はならず。
先制ゴールを決めながら、CKから2失点。再び柴崎のゴールで追いつくも、アディショナルタイムに決勝点を与え、カシマスタジアムはブーイングに包まれた。リーグ戦もふくめてホーム3連敗。一部のサポーターが駐車場付近に集まり、ロッカールームから出てくる選手やスタッフに向けて数時間にわたり暗い敷地内に響かせた罵声は、悲鳴のようにも聞こえた。