野球クロスロードBACK NUMBER
番長・三浦大輔、昂ぶりと冷静の間。
23年連続勝利はDeNA優勝の序章か。
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/05/12 10:30

昨年からDeNAで投手兼任コーチも務める三浦大輔。しかし、まだまだ現役投手として、エースとしての座を譲るつもりはない。
チームの盛り上がりを、二軍から見ていた。
しかし、心はどうか?
5年連続(2008~12年)で最下位の低迷期ですら、チームでただひとり「優勝」を公言してきた男が、大願成就の可能性がにわかに現実味を帯びてきた今季、開幕から二軍生活を余儀なくされていたのだ。落ち着いてチームの戦況を見守れるわけがないはずだ。
そう前置きをして尋ねても、三浦の答えは変わらない。
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「テレビで一軍の試合を見ているなかで、『俺も早くあそこに戻りたいな』とは思いましたよ。チームがあれだけ盛り上がっているんで、自分もそこで投げたいという気持ちはありました。でも、それだけですよ」
やはり、プロ23年の経験があるからこそ、メンタルをも巧みにコントロールできるのだろうか? 質問を変えて再度尋ねると、うん、と軽く首肯した後、三浦は答えの真意を話してくれた。
「やっぱり、去年を経験しているから。それが大きいですよね。だから、今年は落ち込むとか、そういう気持ちはなかったですよ」
三浦は昨季、自身の不甲斐ない投球によって、2度二軍に落ちた。それでも、「正直、心が折れそうになった」と弱気な自分を抑制し、一軍に上がるための調整を妥協せずに行ってきた。その成果が夏場の5連勝、8月の月間MVPへと結びついたのだ。
「二軍でも一軍で投げているつもりで」
昨季の苦い経験は、今季にも間違いなく生かされていた。
シーズン開幕から二軍で3試合に登板し0勝3敗、防御率4.76と、数字としては悪い。しかし三浦は、そのなかにおいても「二軍でも一軍で投げているつもりで、勝つための準備をしてきたつもりなんで」とはっきり言った。
実際、4月末に高橋尚成が一軍登録を抹消されなければ、三浦が今の時期に昇格できたかわからなかった。そういう事実がありながらもベテランは、いつ一軍から呼ばれてもベストパフォーマンスを発揮できるだけの準備を虎視眈々と積んできたわけだ。