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Jの先を行くドイツ代表の「科学力」。
W杯優勝を支えたシステムが進化中。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2015/05/11 10:40

Jの先を行くドイツ代表の「科学力」。W杯優勝を支えたシステムが進化中。<Number Web> photograph by Getty Images

ブラジルW杯で使用していた分析システムの「マッチ・インサイト」では得失点シーンをすぐ見られるなどの簡便性向上に留まっていたが、今回の「スポーツ・ワン」では試合、練習、ケガ管理など統合的なシステムに進化した。

監督から選手達に、映像とコメントをワンタッチで。

 2つ目の利点は、「情報共有の手軽さ」。

 グアルディオラが試合を見ながら、選手たちに共有したい場面が出てきたとしよう。グアルディオラはタイムラインの始点と終点をクリックして映像を切り抜き、「レバークーゼンの切り替えの速さに注意」といったコメントをつけて投稿ボタンを押せばいい。

 そうすると、LINEのようなソーシャルネットワーク上に、監督からのコメントと映像が表示される仕組みになっている。つまり選手は家にいながらにして、iPhoneやiPad片手に監督からの指示を知ることができるということだ。

 もしDFだけに見せたかったら、選手のグループを指定することも可能である。

 ミーティングで映像を見せただけでは、選手の頭に入るかわからない。だが、自分でソーシャルネットワークの専用アプリを開いて映像を目にすれば、能動的な動作だけに記憶に残りやすいだろう。試合前の移動のバスで、見返すこともできる。

ビッグデータ解析がついにサッカーにも。

 ただし、ここまでにあげた2つの利点は、あくまで作業のシンプル化であり、従来の分析の延長線上にあるものだ。

 真の価値は、3つ目の利点にある。それは「人工知能の利用」だ。

 SAP社は機械学習を利用した『インフィニットインサイト』というビッグデータ解析ソフトを持っており、たとえば日本ではすかいらーくが経営するガストの販売データに用いられている。

 ビッグデータを同ソフトの解析にかけると、機械学習によって、たくさんの変数の中から相関を見出すことができる。

 これをサッカーに使わない手はない。

【次ページ】 新たな「サッカーの法則」を見つけ出すことはできるのか。

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