スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
混戦の激化とトレードの行方。
~MLB静かな夏のストーヴリーグ~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2014/07/31 10:30
MLB球宴初出場を果たした守護神・上原に対する他球団の視線は熱い。
上原浩治は意外な展開の可能性が?
そんなわけで、夏のトレード期限まであと3日を残すだけになった28日現在、いわゆるブロックバスター的なトレードはほぼ皆無の状態だ。ジェフ・サマルジャがカブスからアスレティックスへ移ったり、ヒューストン・ストリートがパドレスからエンジェルスへ移ったりしたのが目立つ程度で、噂の焦点になっていたデヴィッド・プライス(レイズ)、ジョン・レスター、上原浩治(ともにレッドソックス)、マット・ケンプ(ドジャース)、ジョナサン・パペルボン(フィリーズ)あたりにはまだ動きが見られない。
ただ、今季もブロックバスターの可能性はまだ少し残されている。プライス移籍の目はまず消えたと思うが、ポストシーズン進出がむずかしくなったレッドソックスのレスターや上原浩治には意外な展開があるかもしれない。とくに上原の場合は、2014年シーズン終了後にFAの資格を得るだけにいまが最高の売り時となる。問題は、レッドソックス側が39歳という年齢をどう判断するかだ。あと数年は必要と判断すれば、FA資格を取ったあとであらためて再契約(高年俸だが短期)という事態も十分に考えられる。
当代随一の大型遊撃手はヤンキースも欲しいはず。
もうひとり、私が気になって仕方がない選手がいる。ロッキーズのトロイ・トゥロウィツキー(通称トゥーロ)だ。現在29歳のトゥーロはロッキーズ在籍9年目。契約は2020年いっぱい('21年は球団側のオプション)まで残っているが、契約内容を見ると、安い年俸(7年間総額4500万ドル)で使えるのは今季までで、来季以降は6年間総額1億1800万ドルを支払わなければならない。
ナ・リーグ最低勝率のロッキーズが、これをどう判断するかが微妙だ。噂では一時期メッツが食指を動かしていると伝えられたが、そこまでの財力があるかどうか。当代随一の大型遊撃手を狙っている球団はほかにも多い。ポストシーズン当落線上にいるヤンキースやジャイアンツも、本音をいえば、喉から手が出るほど彼を欲しがっているはずだ。もしトゥーロが動いて、左腕の必要なパイレーツがジョン・レスターを獲るようなら、ワイルドカード・レースは一段と激化するだろう。