ブラジルW杯通信BACK NUMBER
勝ち抜くことで、急激に成長するW杯。
コスタリカの変貌に思う、日本との差。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2014/07/01 11:15
イタリア、ウルグアイ、イングランドに囲まれた「死の組」で、GL敗退は避けられないと思われていたコスタリカが、PKの末にギリシャを下してベスト8に進出。次はオランダ、彼らの冒険はどこまで続くのだろうか。
ブラジルで、各国がかけがえのない経験を積んでいる。
そういった視点に立つと、ベンジャミン・ウイリアムス主審の判断が恨めしい。66分にコスタリカのドゥアルテが退場になったことで、ゲームの方向性は強制的に絞り込まれたからだ。
1-0でリードしていたコスタリカは、ゴール前を固めてしのぐ。追いかけるギリシャは、攻撃に人数を割いてパワープレーを仕掛ける。フィジカルと集中力、それに胆力が問われる攻防である。
身体能力と空中戦というふたつの圧力にさらされ、セカンドボールの回収に人数を割けないコスタリカは、それでも懸命に踏みとどまった。結果的に1-1へ追いつかれてしまったが、リードを許さなかったのは彼らの守備力が本物であることを示している。“エル・ハルコン(鷹)”の異名を持つ守護神ナバスだけでなく、チームとしてW杯水準のディフェンス力を持っているのだ。そもそもGKに寄りかかるだけのチームが、イタリアとイングランドをシャットアウトできるはずがない。
W杯は厳しい。タフでなければ勝ち抜けない。
だからこそ、勝ち上がったチームは力をつけていく。短期間で急激に成長する。
わずか3週間ほどで、コスタリカはまったく別のチームとなった。タンパで日本に完敗した事実は、もはや忘却の彼方へ過ぎ去っている。
変わったのはコスタリカだけではない。PK戦で散ったギリシャも、壮絶なサバイバルからつかんだものがあるだろう。
日本が新監督の人選に揺れている間に、ブラジルでは各国がかけがえのない経験を積んでいる。それが歯がゆくて、悔しい。