ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
柔の道を照らす真っ直ぐな光。
~溝口紀子・著『性と柔』を読む~
text by
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byRyo Suzuki
posted2014/01/12 08:10
『性と柔 女子柔道史から問う』溝口紀子著 河出ブックス 1400円+税
黒帯が黒くない、なんて知らなかった。
日本女子柔道選手の有段者は、まっ黒な帯ではなく、真ん中に白い一本線が入った黒帯を巻いている。
2013年は何かと不祥事が話題になった柔道界。だけれども、一連の事件は柔道の根源が変わろうとしている大きなうねりの一部だったのだと本書を読むことで背景が見えてくる。そして、なぜ日本の柔道の女子選手たちのみが、男たちとは違う黒帯を巻いていたのかも……。
諸流派が存在していた戦前の柔道史から始まり、GHQによる学校柔道の禁止、武徳会の解散による講道館柔道への統一、スポーツ化とグローバル化の中で強化される全柔連体制。段位制度の継承や権力闘争を繰り返すうちに、どんどんと膨れあがる「男のムラ社会」。その来歴をていねいに客観視することで、世界的にも特異な日本の女子柔道の立ち位置が露になってくる。