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高橋大輔が復活を見せた4年前……。
五輪代表を賭けた全日本、始まる。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/12/09 10:30
2009年の全日本で、ワンツーフィニッシュを飾った高橋大輔と織田信成。今年はどんなドラマが待っているのか。
「全日本選手権はほかの大会と違う」
しばしば、選手たちは口にする。どの選手にとってもそのシーズン後半の国際大会の代表選考のかかる全日本選手権は特別な大会だ。ましてやオリンピックシーズンはなおさらだ。
2009年、バンクーバー五輪の日本代表3枠をかけて、大阪なみはやドームで行なわれた大会もそうだった。当時、代表選考基準はこのように定められていた。
(1) GPファイナルの日本勢最上位のメダリストが全日本選手権出場を条件に内定
(2) さらに全日本選手権の優勝者を選出
(3) 残りを、全日本選手権3位以内、GPファイナル進出者、世界ランキング日本勢上位3人を対象に総合的に判断
(1)の条件で織田信成が実質的に内定し、残り2枠をかけての争い。優勝したのは、高橋大輔だった。
「重い緊張感でした。緊張で体力も奪われました」
「チャンピオンになりたいしオリンピックにも出たいです」
高橋にとっては'08年秋の大怪我と手術、リハビリを経て復帰したシーズンだ、期するものがあったのだろう。
ショートプログラムの「Eye」で「シーズンで一番の出来です」という演技で首位。フリーではジャンプで失敗もあったが、2位との差をさらに広げての優勝だった。
「全日本チャンピオンと言われる演技ではありませんでした」とフリーを悔いつつも、次の言葉には実感がこもっていた。
「いろいろありました。だから(その時間を)無駄にはしたくありません」
織田が2位となり、3位で代表の座を射止めたのが小塚崇彦。
「今までの全日本と全然違う、重い緊張感でした。緊張で体力も奪われました」
と言うほどの重圧を打ち破って表彰台に上がる力となったのは、本人いわく「オリンピックに出たいという思い」だった。
再び、オリンピックシーズンの全日本選手権が始まる。
終わってみれば、大会前に予想された実力者3名が順当に代表入りして終えた'09年の全日本選手権。だが、それぞれに、自分自身の思いを抱え、重圧と戦って得たオリンピックでもあった。
この大会では、町田樹が4位と健闘し、中学3年生だった羽生結弦も溌剌とした滑りで6位となっている。このシーズン、怪我に苦しみ10位に終わった無良崇人も含め、再び迎えるオリンピックシーズンの全日本選手権で、どのような滑りを見せるのか。それは何よりも、自分自身との戦いでもある。