フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
3連覇の世界王者を下した羽生結弦。
圧倒的演技でソチ五輪へ大きく前進!
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2013/12/09 11:15
12月21日から始まる全日本選手権で正式なソチ五輪代表は決まる。ファイナルで優勝した羽生は、うまくピーキングのコントロールができるかが鍵となる。
迫力に満ちた、圧巻の演技だった。
「パリの散歩道」は羽生結弦にとって、昨シーズン二度も歴代最高スコアを更新してきた特別なプログラムである。オリンピックシーズンである今季に、それをキープすることにした判断は正しかった。
「きみのコーチであることを誇りに思う」とオーサーコーチ。
マリンメッセ福岡で開催されたGPファイナルで、羽生は完璧な4トウループ、3アクセル、3ルッツ+3トウループを降りた。2シーズン滑り込んできただけあって、スピンもステップも余裕を持ってこなし、振付もよくこなれた滑りだった。
99.84というスコアが出ると、7千人余りの観客から悲鳴にも似た歓声が上がった。
「点数には驚いています。ブライアン(オーサー)に、きみのコーチであることを誇りに思う、と言ってもらいました」羽生は少し照れくさそうに、そう言った。
世界王者、チャンの失速。
このSPの勢いが、羽生結弦を初のGPファイナルタイトルへと導いた。
本大会での最大のライバルは、言うまでもなく3年連続世界王者のカナダのパトリック・チャンだった。今シーズンすでにスケートカナダ、フランス杯と二度も羽生はチャンとあたり、どちらも2位に終わっていた。スケーティングがずば抜けて巧く、4回転を着実に降りるチャンは、誰がどうあがいてもなかなか勝てない絶対王者だった。
そのチャンを、福岡では羽生がいとも簡単に破ってしまった。
SPでパトリック・チャンは、最終滑走だった。最初の4+3をきれいに決めたところはさすがだったが、3アクセルでステップアウトし、ルッツは2回転に。会場内にまだ残っていた羽生のエネルギーに圧倒された、というような演技だった。
「ユヅルが出した点数は事前には知らなかった。でも会場の歓声から、すべてジャンプを成功させたのだろうなということは、見当がつきました」
会見場でのチャンは顔色がすぐれなかったが、懸命に笑顔を作ってそう語った。