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100点が1球団、60点以下は7球団。
各球団の2013年ドラフトを完全採点!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/25 13:00
星野仙一監督は「攻めていくところがいい。私の好きな選手です」と最大限の賛辞。松井自身は「今シーズン、パ・リーグを優勝されているチームなので、本当に強いチームに選んでもらえて本当に光栄です」とコメントした。
12球団で唯一、満点をつけられる指名をしたのは。
●100点 オリックス
まさかまさかの吉田一将の単独指名となった。
オリックスの泣き所は金子千尋、西勇輝以外、安定した活躍を見込める先発投手の不足だ。吉田の長所はストレート(最速148キロ)が速いだけでなく、スライダーを主体にした変化球にキレがあり、それをアウトローの内外に出し入れする制球力を備えているところである。
外を生かすための内角攻め、というのはピッチングのセオリーだが、内角球には当たれば長打のリスクも伴う。それを避けるためアウトローへの緻密なコントロールを身につけ、社会人を代表する投手に上りつめた。来季のローテーション入りは間違いないと言っていいだろう。
2位・東明大貴(富士重工業・投手)も社会人1年目からチームの中心的存在になっている。ストレートの速さとともに目を見張るのが、打者の内角を攻める攻撃的精神。これは吉田とは正反対の持ち味で、おとなしい印象のオリックス投手陣にカツを入れる存在になり得る。3位以下では若月健矢(花咲徳栄・捕手)、吉田雄人(北照・外野手)と18U世界野球選手権に選ばれた選手を並べ、久々に最高点がつけられる指名を敢行した。
●95点 楽天
5球団が1位で競合した松井裕樹を抽選で勝ち取り、文句のない指名になった。
これまで高校球界のスター左腕は、その多くがプロで挫折している。右腕にくらべ先発完投型の左腕は昔から数少ない。そのため、150キロくらいの速球を投げる投手が出るとマスコミは大騒ぎするわけだが、速いだけで成功できるほどプロは甘くない。しかし、松井にはプロも顔負けの縦割れのスライダーがある。さらに春に猛威を振るったチェンジアップがあり、ストレートもプロで勝負できる最速149キロの速さがある。
それほど松井がいいのに95点と満点に5点足りないのは、野手が2位の内田靖人(常総学院・三塁手&捕手)しかいないため。野球は投手と野手のバランスの上に成り立つスポーツである。チーム状態が投手のほうを必要としていても、合計9人指名するなら少なくとも野手を3人は指名しなくては攻守のバランスが崩れる。下位でもあと2人くらいは野手を指名してほしかったというのが偽らざる思いである。それ以外は文句のない指名だった。
●90点 広島
1位で意中の選手を指名して交渉権を獲得すれば、それだけで高評価できる。ましてや大瀬良大地(九州共立大・投手)は大学1年春から常にチームの主戦投手として働き、レベルの高い福岡六大学リーグで防御率0点台が5季、1点台が3季と、2点台に落ちたことが一度もない。客観的に見ても超一級の実績であることは間違いなく、その選手の交渉権を獲得できただけで90点以上の評価をすることができる。
大学・社会人4人に対して、高校生が5位の中村祐太(関東一・投手)1人だけと年齢的バランスを欠いているが、昨年のドラフトで広島は1、2位で高校生を指名しているので2年間でのバランスは悪くない。それでいて満点に10点及ばないのは2位・九里亜蓮(亜細亜大・投手)がストレートに不安を残し、3位・田中広輔(JR東日本・内野手)がバッティングに不安を残しているからである。
九里は大学の1学年先輩、東浜巨(ソフトバンク)とも共通する、ストレートよりも技巧に頼るピッチングからの脱却、田中は高校時代から続くアッパースイングの克服が今後の課題である。