外れ外れ外れ1位でも気概を見せた日本ハム。

　冒頭で森唯斗の指名を激賞したソフトバンクは、実戦的な投手を1～3位で指名した。1位・加治屋蓮（JR九州・投手）はどの紙面でも「150キロ超えのストレート」という言葉で紹介されているが、カットボールやツーシームなど小さく変化する球に、スライダーやチェンジアップという大きく変化する球を交え、ここに140キロを超えるストレートを加えて打者を翻弄するピッチングに特徴がある。あえて形容するなら「本格・技巧」という言い方が適切だろうか。

　速球派というなら2位の森のほうが納得できる。スポーツ紙には「最速146キロ」とあり、私が見た都市対抗では143キロが最速だったので「速さは大したことがない」と思われがちだが、ベース付近で伸びるストレートの体感速度は優に150キロを越えているだろう。

　これほど期待できる2人を獲得しながら60点と採点が低いのは、2人とも社会人球界に確固とした足跡を残していないからだ。社会人なら実績を含めての総合評価になる。そういう面では加治屋も森も物足りない。プロで実績を積んで私の低評価を是非見返してほしい。

　これら60点組の中では、日本ハムが最も冒険心に富んだ指名をしている。1位の抽選で3回破れ（松井→柿田→岩貞）、ここで投手から高校生野手に方向転換。外れ外れ外れ1位で渡辺諒（東海大甲府・内野手）を指名している。日本ハムの内野手は西川遥輝、中島卓也、杉谷拳士、松本剛と好素質の若手が揃い、ここに中田翔が外野から三塁へコンバートされることが既定路線になっているが、遊撃のポジションには万全なレギュラー候補が育っていない。渡辺の指名は3～5年先を見据えた戦略と言ってよく、日本ハムの持ち味が遺憾なく発揮された指名と評価したい。

　各球団の指名が本当に評価できるのは10年後である。2023年、この76人の指名選手がどのような野球人生を歩んでいるか虚心坦懐に振りかえってみたい。