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<富士山を10倍楽しむ方法> 服部文祥 「魅力は『高さ』に尽きる」
text by
NumberDo編集部Number Do
photograph byBunsho Hattori
posted2013/07/26 06:01
登ってみようか、と思う人も多いはずだ。だがせっかく登るのに、
ただ山頂を目指すだけではもったいない。そこで富士登山を
もっと楽しくする隠れスポットを富士山の達人たちが伝授する。
好評発売中の雑誌Number Do『日本百名山を再発見~あの山はもっと遊べ
る!~』では、山登りの楽しみ方を様々な角度から切り込んでいます。
今回はサバイバル登山家・服部文祥さんに富士山の奥深さを聞きました!
食料を現地調達し、装備を極力廃したスタイルで話題となったサバイバル登山家、服部文祥。意外なことに、今まで最も数多く登った山は富士山だという。しかし、その楽しみ方は普通の人とはちょっと違う。
驚くなかれ、今までの登山人生で一番たくさん踏んでいるのが富士山の山頂です。ワンゲル部時代にもよく登ったし、最近でも年1回以上は必ず登ってる。トータル20回以上は行ってるんじゃないかな。ただ、好きで登ってるのとはちょっと違う。なんで登るかと言えば3776mの高さ、これに尽きる。とにかく酸素の薄いところに行くためですね。海外の高峰を目指す前には必ず登るし、最近は、趣味で陸上にハマッてるから大会前に登ります。現在の目標は1500mの自己ベスト(2年前に出した4分27秒)を更新すること。だから、言ってみれば目的は合法的なドーピング。富士山頂を経験すれば、確実に心拍数が下がるし、体調もよくなるから。
よくやるパターンは会社を休まず富士山へ登頂する24時間コース。
俺がよくやるパターンは、会社を休まずに行く24時間コースです。平日の夕方に会社(『岳人』編集部)を出て、16時新宿発の高速バスに乗る。富士吉田のラーメン屋で夕飯を食って、ラーメン屋のお兄ちゃんに2リットルのペットボトルを3、4本わたして満タンにしてもらう。それをザックに入れて、パンを買い込んでタクシーで馬返しへ。で、22時くらいから歩き始めて2時間ほどで五合目に着くので、廃屋で仮眠。朝5時くらいからゆっくり登って、9時か10時に山頂着。山頂でラジオ体操をしてから、吉田大沢をザーっと転がるように1時間半くらいで降りる。それから12時くらいのバスに乗って、夕方には会社に戻る。だいたいそんな感じ。ちょっと早く帰りますみたいな顔して会社を出て、翌日の夕方、ちょっと遅れましたみたいな顔で会社に行く。早退遅刻で有給を使わずに登れるからいいですよ。
富士山は、登山行為の対象としてはあんまり魅力的とは言えないんですよね。だって何もないから。谷もなければ岩もない。のっぺりした砂山みたいな感じで。魅力はやっぱり高さだけです。でもね、高さというのは日本人にとってすごい財産ですよ。
高山っていうとすぐヒマラヤをイメージするけど、4000mクラスの山を持ってる国というのは、よく考えるとあんまりない。もし富士山がもう少し低かったら、山野井泰史さんとかピオレドールを受賞した登山家たちの出来高が、もっと少なかったかもしれない。しかも、そんな山に初心者でも登れるというのが素晴らしい。本当に懐が深い山だと思います。