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大宮の快進撃はどこまで続くのか?
大波乱が起きたJ1前半戦を総括。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2013/06/01 08:01
昨季の9月1日から続いていた大宮のJ1連続無敗記録は5月11日に「21」でストップしたが、その勢いは衰えず前半戦首位を確保している。
日本代表のブラジルW杯最終予選とコンフェデ杯のために1カ月の中断に入ったJ1リーグだが、前半戦は春の嵐が吹き荒れた波乱の展開となった。
万年残留争いだった大宮アルディージャが優勝候補の浦和レッズ、鹿島アントラーズ、サンフレッチェ広島らを抑えて、まさかの首位に立ち、戦力ダウンで苦戦必至と言われていた横浜F・マリノスが浦和と得失点差による3位と健闘。一方、2010年のリーグ覇者の名古屋グランパスは14位と低迷し、前田遼一、駒野友一、伊野波雅彦ら日本代表3人を抱えたジュビロ磐田は、13試合でわずか1勝しかできず17位に沈んでいる。
春の嵐は、なぜ吹き荒れたのか。
大宮と横浜FMは、ともに守備は堅かったが、得点力不足が深刻な課題だった。だが、今シーズン、大宮はカウンター、横浜FMはセットプレーという武器に磨きが掛かった。その結果、昨年の同節までの大宮の得点は11点、横浜FMは14点だったが、今年はともにこれまで25得点を挙げている。得点力アップにより、元々良かった守備がより洗練され、勝てるチームへと変貌したのだ。
組織力で勝つ「大宮特急」は包囲網を突破できるか?
大宮は、今シーズン目標の勝ち点は53点だったが、すでに32点(10勝1敗2分け)を獲得している。このペースで行けば昨年優勝した広島の64点を越え、1リーグ制最多勝ち点を記録して優勝した浦和、鹿島、名古屋、柏の72点を越える可能性も出てきた。「日本中が驚いているだろう」とノバコビッチが言うが、その通りの躍進ぶりだ。
「組織的なプレーをどういった共通意識でやるか。いかに楽してスピーディーに攻撃するか。いかに組織的にコンパクトに守るか」
ベルデニック監督はチームの基本コンセプトをこう語る。この3カ条は言うほど簡単ではないが選手はそれを具現化しようと努力し、監督も試合中、90分間立ちっ放しで選手間の距離やポジショニングなどを修正し続けている。そうした妥協のない細かい作業が、チームの完成度を高め、浦和戦など重要な試合に勝つことで、さらに自信を深めていったといえる。
青木拓矢は、「今のサッカーを継続し、プレーの精度を高めていけばもっと強くなる」と言ったが、選手は自分たちのサッカーに対する迷いがなく自信を持って戦っている。これが、大宮の強さだ。
だが不安がないわけではない。仙台戦ではロングボール攻撃にうまく対応できず敗れた。今後、各チームはこのような大宮対策を講じてくるだろう。しかも、中断明け3試合目ほどから上位チームとの対戦がつづく。優勝への最初の試練となるが、そこを勝ち越せれば「大宮特急」は、さらに加速して行きそうだ。