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7人制は史上初の世界ベスト4、15人制は格上のアメリカに初勝利…この強さは本物か? トップ対談で「日本女子ラグビーの可能性」を占う
posted2025/06/05 10:01

右から太陽生命保険株式会社代表取締役社長・田村泰朗氏、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会理事 事業遂行責任者・女子ラグビー担当 女子委員会 委員長・香川あかね氏
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
──太陽生命は2013年からサクラフィフティーンとサクラセブンズのオフィシャルスポンサーを、2016年以降はオフィシャルパートナーを務めていて、日本女子ラグビーの発展を支えています。
田村 元々のつながりで言えば、2011年から特別協賛している「全国中学生ラグビーフットボール大会(太陽生命カップ)」があります。2016年のリオ大会で7人制ラグビーが正式競技に採用され、女子ラグビーを強化していこうということで日本ラグビーフットボール協会から(オフィシャルスポンサーの)お話をいただきました。当社としても女性のお客様、従業員が非常に多く、これから世界で活躍する女性を応援したいとの思いが重なりました。
香川 当時、セブンズの代表合宿は平日にはできず、学校や仕事終わりに選手たちが集まってトップリーグ(現・リーグワン)のチームのグラウンド、ナショナルトレーニングセンターのジムなどを借りて練習していました。週末は合宿できるとしても宿泊施設ではみんな雑魚寝で、環境が整っていない状況でも「強くなりたい」という一心でみんな頑張っていました。リオ大会の競技として決まって協会としても強化、育成、普及に力を入れるようになり、太陽生命さんにサポートしていただけるようになってからは徐々に環境が整い、国際大会でも結果を出せるようになってきて今があります。
田村 女子ラグビーの魅力に「軽やかさ」があると思います。それでいて助け合う、励まし合うという醍醐味があり、観ている方や関係者とも一体となることができる競技。熱くさせてもらえると同時に、どこか温かい気持ちになれるんですよね。
香川 何事にもひたむきにチャレンジしてきた選手とスタッフたちなので、そう言っていただけると嬉しいですね。女子日本代表は男子ラグビーと違って、日本人選手がほとんどになるのでどうしても体格差が出てしまいます。そのなかでスキル、連係プレーの精度を上げて、一体感を持って戦っていく。日本のみならず海外のラグビーファンの方にも評価していただいています。
田村 強くなってきているのは日本女子ラグビーの立ち上げから携わってきた選手、スタッフ、関係者のみなさんが困難に立ち向かって開拓してきたパイオニア精神があるからこそ。それが伝わってくるから、観る人々を勇気づけたり、元気づけたりできるのでしょうね。
香川 女子ラグビーが日本で本格的に始められたのが1980年代。世間一般的に女性がスポーツをすること自体、あまりポジティブに受け止められていなかった時代だと思います。しかも体をぶつけ合うラグビーですから、受け入れてもらえるまでには時間が掛かったとも言えます。そういった方々のラグビーに対する思いが、脈々と受け継がれていると私自身も感じています。
──昨年のパリ大会では過去最高となる9位。強化に一役買っているのが、「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」です。
田村 特別協賛して10年以上が経ちます。今や海外のトッププレーヤーたちに「大会に参加したい」と言ってもらえるようになっていて、当初からすれば考えられないこと。大会が高いレベルになっていけばいくほど、日本女子ラグビーの向上にもつながっていくのではないかと考えています。
香川 強化、育成、普及においてこの大会の意義はかなり大きい。出場選手、出場チームがこの10年でどんどんと増え、6月から本戦が開幕する本年の大会はこれまで国際大会のスケジュール上、参加できなかった日本代表選手や海外のビッグネームも出場できることになりました。また、チャレンジチームとしてアカデミーチームを参加させることによって、若手が経験を積む貴重な場にもなっています。
──サクラセブンズ同様、サクラフィフティーンも確実に成果を上げています。4月には格上のアメリカ代表にも勝利しました。そして8月にはイングランドにおいて4年に一度の大舞台を迎えます。
香川 レスリー・マッケンジーHCのもと、強化は着実に進んでいます。同じプールで試合をするスペイン代表と7月に2試合行なうテストマッチが大事になります。本大会ではターゲットに置くベスト8を達成して、次につなげていきたいと考えています。
田村 前回大会よりも力をつけてきていることは見ていても凄く感じます。人というのは驚くほど成長するときがありますからベスト8と言わず、それ以上のジャンプアップを期待しています。
──それでは最後に。日本女子ラグビーの未来がどのようになっていけばよいとお考えでしょうか?
香川 競技人口も、2018年以降は概ね毎年増えております。女性が気軽にラグビーに触れられる環境が整い、ウェルビーイングを感じられる世界になっていくことを望んでいます。そのためにも全国の都道府県において拠点となるところを一つずつ確実につくって地域に根づく女子ラグビーを目指していきたい。女子ラグビーファミリーが増えていけば、自ずと認知度も上がっていくと期待しています。
田村 競技人口が増えていくことで日本女子ラグビーそのものが強くなる。強くなっていけば認知度も上がっていく。そういう循環をしっかりとつくっていくことが大切になるのではないでしょうか。当社としましても、日本女子ラグビーの発展のため応援してまいりたいと思っています。
