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「スポーツ・エンターテインメントを生かした街づくりを」バスケットボール女子日本代表を応援し続けて10年目を迎えた三井不動産の思い
posted2025/06/05 18:00

昨年7月の「三井不動産カップ2024」では、女子日本代表の国際強化試合として史上最多1万1624名の観客が来場した
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
MITSUI FUDOSAN ©日本バスケットボール協会
人が集まる場所をつくり、賑わいや新しいものを生み出してきた三井不動産は、時間の経過とともに周囲の環境に馴染み年月を経る度に魅力を高める施策を行なってきた。日本橋や東京ミッドタウン日比谷などを手掛け、2005年からは千葉県柏市で柏の葉スマートシティとして、世界の未来像をつくる街をコンセプトに公・民・学連携の街づくり事業を進め、次世代につながる暮らしと社会を実現している。
「発信する」「つなぐ」「受け入れる」というテーマのもと、街づくりを起点に人や地域や社会にいい変化をつくりだし、変えていくことを目指す同社が力をいれているのがスポーツやエンターテインメントとのコラボレーションだ。
「BE THE CHANGE」のスローガンを掲げ、ボルダリングウォールやスケート場などを備えた東京・渋谷の「MIYASHITA PARK」、200m陸上トラックを併設したスポーツパークを有する福岡県の「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」、屋内型スタジアムコートを有する大阪府の「三井ショッピングパーク ららぽーと堺」などを、スポーツも楽しめる商業施設として訴求した街づくりを手掛けてきた。また子どもたちがアスリートのレッスンを受けられるイベント「三井不動産スポーツアカデミー」を通じてコミュニティづくりも推進している。
同社がスポーツによる街づくりに力を入れてきたのは2015年まで遡る。
コロナ禍での開催となった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会でゴールド街づくりパートナーに就任したことが一つのきっかけになったと平原秀人広報部長は語る。
「三井不動産グループに受け継がれている『&マーク』の理念は、共生・共存・共創により新たな価値を創出する、そのための挑戦を続けることを意味します。自己の限界を突破する、チーム一丸となって乗り越えるといったように常に挑戦し続けるスポーツの姿勢は当社の企業理念に通ずる部分が多く、支援や協賛を通じて、我々の想いも伝えられるのではないかと考えましたし、スポーツとの親和性も強く感じました」
スポーツは劇的な結末、番狂わせがある。いわば筋書きのないドラマだ。だからこそ見ている人の心を大きく揺さぶる。
観客に圧倒的な感動を与えるスポーツは街をつくる上でも強力なコンテンツだと考えた三井不動産は街の魅力や価値の醸成が企業としても絶対的な強みになると捉えている。
「街づくりはハード面を作るだけではなく、街のなかのコミュニティ、いわゆるソフトも作っていかなければ付加価値は上がりません。コミュニティを活性化するスポーツは住む方はもちろんですが、そこで働く方、そこに来る方、そういったみなさんが繋がる、コミュニケーションするための最適なツールになると考えています」(平原氏)
三井不動産のスポーツを活用した街づくりや商業戦略は本格的なアリーナ運営にまで広がっている。
昨年春には南船橋駅近くに多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」を開業。BリーグB1所属・千葉ジェッツのホームゲームやアーティストのライブなどが相次いで開催されている。アリーナ単体の魅力はもちろんだが、周辺の商業施設でイベント前後も楽しめる取り組みを実施。アリーナを訪れて試合を観るだけでなく、街で過ごす場所としての体験価値も創出している。
「周辺には『三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY』や『三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO-BAY』などの商業施設があります。アリーナで試合を観たり応援したりするだけでなく、試合の前後に食事をしたり関連グッズを購入したり、映像を見たり、試合以外の時間も楽しく過ごせる方が増えたと感じますし、試合後にみんなで盛り上がれるという意味では親和性が高いのではないでしょうか」(平原氏)
また2021年には東京ドームを子会社化。都内最大規模のエンターテインメントシティをリニューアルし、非日常感の醸成や期待感の高揚、快適性などの向上を図ることで街の一体感を醸成し、魅力的な空間を創出。スポーツ・エンターテインメントを生かした街づくりで地域住民とのかかわりを深めながら街に賑わいをもたらし、地域経済の活性化も支援するなど、三井不動産のスポーツを通した街づくりはますます広がるばかりだ。
同社は多様性と調和、共生社会の実現を目指すJOC(日本オリンピック委員会)とJPC(日本パラリンピック委員会)が掲げる理念や使命に共感し、TEAM JAPANを支えるとともに、JBA(日本バスケットボール協会)やJFA(日本サッカー協会)などスポーツ競技団体との街づくりパートナー契約を結び、価値共創を推進してきた。
JBAとは2016年にスポンサーシップ契約を締結。3x3 JAPAN TOURの開幕戦を日本橋のコレド室町テラスの広場で開催するなど集客に貢献。これまで街のコミュニティの活性化を目的にバスケットボールアカデミーの開催や、女子日本代表の強化機会を創出するなど様々な形で継続的に日本のバスケットボール界のサポートを行なってきた。
「毎年数回にわたり、ららぽーとなど全国の商業施設に一流アスリートを講師に招き、地元のお子さんを対象にスポーツ教室を実施しています。直接アスリートと触れあう体験を通じて、多くの方々の繋がりやコミュニティを活性化することを目的としています」(平原氏)
スポーツの力を活用した街づくりの推進のみならず、2016年からはバスケットボール女子日本代表の活動の一環として国際大会に特別協賛し、強化にも寄与してきた。
「バスケットボールは学生時代に部活で携わる方や、男女問わず競技人口もファンも多い印象です。そういった意味でも我々にとってバスケットボールそのものを応援することは意義があると感じています。また選手の実力を少しでも引き上げることに貢献できたらという思いから国際試合の実施を立ち上げましたが、たとえば東京2020大会で銀メダルを獲得したように、チームや選手個々の成長に繋がる機会を提供できることにも協賛の意義を実感しています」(平原氏)
毎夏継続的に開催されている「三井不動産カップ」は選手たちにとっても海外勢と対戦できる経験の場となっている。東京2020大会、パリ2024大会と2大会連続で大舞台を経験した東藤なな子は「貴重な機会」だと感謝する。
「練習で積み重ねてきたことがどれだけ通用するのか、今、自分やチームにとって何が課題なのかを明確にできる。国際試合の機会をいただけるのは本当にありがたいです」
東京2020大会ではキャプテンの重責を担い、長年不動のセンターとして代表を支え続ける髙田真希は2016年から10年にわたる「三井不動産カップ」のサポートに感謝すると同時に、継続的な支援に身が引き締まる思いも口にする。
「単にスポンサーをしてくださるだけでなく、どうすればバスケットボールが日本でより広がっていくのか、どうすれば選手の強化につながるのかという視点でもいろいろ考えていただいていると感じます。それだけバスケットボールを熱くサポートしてくださるからこそ、自分たちも結果で恩返しをしなければと強く感じています。個人としてもチームとしてもこの大会の存在は年々大きくなっているんです」
昨年の同大会ではパリ2024大会を前に同社がジャイアントユニフォームキャラバンを企画。試合前にはファンの熱い応援メッセージが書き込まれた特大ユニフォームがバックスタンドで大きく揺れた。その光景に選手も感動の表情を浮かべていた。
「ファンの方々にパワーをいただいた、みなさんと一体となって戦っていたと感じました」(東藤)、「普段はファンのみなさんと関わることがあまりないので、イベントでみなさんと触れあえたことで応援していただいているとあらためて感じられた」(髙田)と女子バスケットボールを応援する熱い声、そして支える多くの人たちの想いを選手たちも感じ取っていた。
6月7、8日にはコーリー・ゲインズHCの下、新生・女子日本代表の戦いがスタートする。今大会も支援する三井不動産の平原氏も選手たちにエールを送る。
「新HCの初陣であり、若い選手も多く代表入りされたということで非常に期待しています。もちろん勝ってもらいたいですが、目先の勝敗にとらわれ過ぎず、中長期的な目標を視野に入れて強化していただきたいです。次の大舞台では一番いい色のメダルを。それに当社が少しでも貢献できればうれしいですね」
