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“本家”二天一流の達人に聞く――。
大谷翔平、二刀流成功の極意とは? 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/04/23 10:30

“本家”二天一流の達人に聞く――。大谷翔平、二刀流成功の極意とは?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

4月22日現在、大谷は一軍8試合に打者として出場。18打数5安打、打率.278という数字を残している。

そもそも「二刀流」とはどういうものなのか?

「二天一流」とは、二刀流で名高き剣豪・宮本武蔵を始祖とし、肥後熊本に伝えた兵法を現在に受け継ぐ二刀流の本家本元。400年の時を経て幾つかに分派しながらも現代にその極意を受け継いでいるが、武蔵の時代の古流兵法の伝統を護りつつ、現代剣道の世界に“最強の二刀流”を復活させるべく日々研鑽を重ねているのが、荒関富三郎二刀斎が創始した「二天一流武蔵会」

 その本部長である佐藤太さんに「二刀流の真髄」と、その極意を修得するための心構えについて聞いてみた。

 どこまで野球に転用できるかどうかは不明だが、王貞治、榎本喜八らのように、武道の精神性、剣の修業を通じて打撃の真髄へ辿り着いた例も過去にはある。故障中の大谷君もよろしければ参考にどうぞ。

「まず、二天一流に関してですが、多くの人々は“二刀流”という言葉は知っていても、具体的なことまでは知られていません。大刀と小刀の二刀を用いて戦う剣術という解釈は間違ってはいませんが、その真意は少し異なります。二天一流の祖である宮本武蔵は、『五輪書』において、『太刀を片手にて取りならはせん為なり』と書いているように、この二刀は、二つの刀を用いて戦う技術というよりも片手でも刀を扱うための修練という側面が強いのです。その真意は『自在の剣』。武蔵は、物事に執着しこだわりを持つことを強く否定していました。すなわち戦いにおいて“常識”である一刀中段に執着することは勿論、二刀にのみ執着することもまた無意味ということです」

武器や構えなど、一切にこだわらない自在の剣こそ求める境地。

「戦場においてはどのような状況でも戦えなければなりません。二刀が使えるならその利を最大限に活かして二刀で戦う、身が馬上にあったり、腕を落とされるなど一刀しか使えない状況ならばその一刀で、刀が使えなければ他の道具でというように、その場の状況に応じて常に最大限の働きを果たす。そして武士たるもの、最期に討たれる際には、脇差を差したまま、要は自分の持つ力を出し切らないまま死ぬことは本望ではない。やるならば、最後の最後に小太刀すら使い、自分の力を出し切って死ぬべきだという発想があります。

 そのために日頃から大小二刀を自在に扱えるよう鍛錬し、あらゆる場面に対応できる剣の技術を習得するのです。これを修練すれば、一刀中段のみならず、あらゆる構え・技を使いこなせる、武器や構えなど、一切にこだわらない自在の剣が身につきます。これこそが二天一流が求める境地なのです」

【次ページ】 腰に差した“才能”を眠らせたままにしないために。

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