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<マラソンの巻> これがマラソン大会を支える、マイクロ・トーク・システムズのJチップシステムだ! 

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秦野邦彦

秦野邦彦Kunihiko Shinno

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posted2012/05/20 08:00

<マラソンの巻> これがマラソン大会を支える、マイクロ・トーク・システムズのJチップシステムだ!<Number Web> photograph by Sports Graphic Number
スポーツにまつわる役立つモノやほしいモノ。その歴史や開発秘話、
便利さを、関係者に語ってもらう当連載。今回のお品は、Jチップ!

「世界中のマラソン大会になくてはならない記録計測。
そのシステムって一体全体どうなっているの?」
の巻。

 皆さんは「Jチップ」なるものをご存知だろうか。サッカー選手のカードがオマケに付いたお菓子? 否〈ノン〉。正解はマラソン大会などのスポーツ計測システムのこと。重さわずか9gの非接触ICタグを付けた選手がマットアンテナの上を通過すると、電波をキャッチして自動的にタイムを記録してくれるという仕組みなのだ。今回はこのJチップを開発したマイクロ・トーク・システムズ株式会社の橋本純一郎社長に登場いただいた。

「1980年代まではマラソン大会の記録計測の主流はバーコード方式でした。これは選手のゼッケンに印刷したバーコードをゴール地点で読み取り、タイムと順位を集計するというシステムですが、人手がかかるうえ記録も正確ではありません。そこで'90年代に入り、米国のテキサス・インスツルメント社が非接触でIDを確認する技術を開発すると、このチップを使った新たな計測システムができないかと世界中で模索が始まったんです」

胸に付けるタグが求められるなかで見出したチャンス。

 '94年にマイクロ・トーク・システムズを設立した橋本社長も研究を進めていたが、一足早くオランダのチャンピオンチップ社がシューズにタグを付けるタイプの計測システムを完成。'94年のベルリンマラソンでの成功に続き、'96年のアトランタ五輪のマラソンに正式採用されたことで一躍世界を席巻することとなる。

「ただ、陸上競技はトルソー(胸部)で記録をとるのが原則なので、シューズではなく胸に付けるタイプのタグがずっと求められていたんです。ところがチャンピオンチップ社が使用しているタグでは、技術的な問題で地面に置いたマットアンテナから胸の位置まで電波が飛ばせない。我々としてはそこにチャンスがあるんじゃないかということで、'98年から独自のチップの開発プロジェクトをスタートさせました。あるときは河原にマットアンテナを敷いて、タグを何十個も自分の身体に付けてテストしたり、またあるときは市民マラソン大会の協力を得て実験させてもらったり。何度も試行錯誤を経て、ようやくプロトサンプルが出来上がったのが'02年の終わり。そこからさらに品質的に安定させ、実際に量産化に成功したのは'05年になってからです」

【次ページ】 Jチップを応用し、工場での従業員管理などにも。

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