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フィギュア現行採点法はやっぱり変!?
世界選手権のキム・ヨナ騒動を検証。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2010/04/07 10:30

フィギュア現行採点法はやっぱり変!?世界選手権のキム・ヨナ騒動を検証。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 なんだか、おかしいぞ。

 フィギュアスケート世界選手権、女子フリーの採点を見ての話である。

 今季はオリンピックのシーズンであり、トリノで開かれた世界選手権はそのラストを飾るイベントだった。別の見方をすれば、トリノ・オリンピック以後の四年間の総決算であり、それは選手だけでなく採点システムにも当てはまることだった。

 今大会、浅田真央はショートプログラム、フリーともに2位だったものの、他の選手に比べ、2日間ともに安定した成績を残して2度目の世界選手権優勝を果たした。

 しかしフリーで浅田が2位という判定には疑問符がつく。1位のキム・ヨナのスコアは130.49。2位の浅田が129.50。キム・ヨナはジャンプの失敗が2度もありながら、トップの成績を収めた。

 なんだか、違和感がある。

 これって、現状の採点システムの限界を示しているのではないか?

公式採点結果の数字を詳しく見ていくと……。

 詳しい採点結果については、簡単に国際スケート連盟のホームページで確認することが出来る。

 ここでは分かりやすい点数比較をしてみよう。

●総要素点(Total Elements Score)
   キム・ヨナ   浅田真央 
基礎点 57.05 59.30
GOE
(加点・減点)
9.40 7.72
   66.45   67.02 
●総構成点(Total Program Component Score)
   キム・ヨナ   浅田真央 
スケーティング・スキル 8.35 8.25
要素のつなぎ 7.75 7.40
演技力 7.95 7.95
演技の振り付け 8.15 7.55
曲の解釈 8.45 7.90
総構成点
(構成点の1.6倍)
65.04 62.48

 ふたりの得点を比較していくと、2度のジャンプ失敗にもかかわらず、キム・ヨナの総要素点のスコアが浅田のものとほとんど変わらないことが分かる。

 キム・ヨナはトリプル・サルコウの失敗で基準点が落ち、さらにはマイナス3の減点。加えてダブル・アクセルに関しては完全な失敗で評価はゼロ。丸々、ひとつの要素が抜けている状態なのだ。

 もし、この要素をうまくこなしていたら、プラス10点はついていてもおかしくはない。

 対する浅田は、本人が言うように「パーフェクトな演技」に近く、トリプル・アクセルでダウングレードを取られたものの、完璧な「鐘」の演技が見られた。しかしほぼ同じ点数しか出ない。

 間違えないでいただきたいのは、これは選手個人を責めているのではなく、あくまで採点システムに問題があるということだ。

今のフィギュアスケートは数学的なスポーツなのだ!

 現状の採点システムにおいては、滑る前に順位が決まっている印象がぬぐえない。

 キム・ヨナ陣営がオリンピックで金メダルを獲得できたのは、現状の採点が求めているものに対して完璧な準備を行い、模範解答を示したからである。それは完璧な模範解答だった。

 オリンピックでの高得点は、コーチ、振付師の戦略の勝利とも言える。コーチたちは審判とコミュニケーションを取り、プログラムの手直しを図る。

 コーチたちが持つノートには「2」やら「3」やら、「A」(アクセル)、「Lz」(ルッツ)などの文字が並ぶ。まるで高校で習う数学のようだが、計算式を使いながら最良のプログラムを作っていくのがコーチたちの仕事になっている。

 今のフィギュアは数学的なスポーツなのだ。

 もちろん、キム・ヨナ自身がコーチたちの求めるものに応えるだけの能力を兼ね備えていたから金メダルを獲得できたのは間違いない。

【次ページ】スポーツである以上、難易度の高い技にこそ高評価を!

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