MLB Column from WestBACK NUMBER

ボールから始まる世界基準 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2004/11/22 00:00

ボールから始まる世界基準<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 先日、日米韓の3ヵ国の間で2006年春に野球というスポーツとしては初めてのワールドカップ開催が合意に達したというニュースを目にした。今年は日本球界にとって多難な1年だっただけに、やや斜陽傾向にある野球人気を盛り立てる意味でも、重要なイベントになりそうだ。今回こそ、アテネ五輪のようなチーム枠制限などない本当の意味でのドリームチームを編成して、記念すべき初優勝を狙ってほしいものだ。

 そこで、今後日本の野球がワールドカップなどで常に世界で通用するためにも、1つ苦言を呈しておきたい。公認球の問題についてだ。

 ちょうど3ヵ国協議と前後するように、日米野球が開催されていた。今年は残念ながら取材することができなかったが、過去3大会は足を運んでいる。毎回のことながら、メジャーのパワーが圧倒されてしまう。今年の全8試合の本塁打数を比較しても、メジャー9本に対し、日本はわずか1本とメジャーの圧勝だった。だが、単純にパワーの違いと割り切ってはいけない。実は、その使用球に大きな秘密が隠されているのだ。

 日米野球は最近、メジャーの公認球を使っている。日本の公認球よりもやや重く、日本の用に縫い目の数も定まっていない。特に、表面の皮質もかなり違っていて、メジャーのボールはかなり滑りやすいと言われている。慣れない日本人選手にとっては、「投げにくい」し、「打ちにくい」ボールなのだ。

 一方で、日米野球では沈黙していた日本人の打者たちの多くが、メジャーに匹敵する本塁打数を記録している。すでに何人のも日本人投手がメジャーで活躍する現在、日本に残る投手たちも決してメジャーに劣っているとは思えない。確かに日米の間で、球種や攻め方等の“トレンド”の違いもあるだろうが、それ以上に使用球の違いが日米野球の差の大きなファクターになっているとしか思えない。

 例えば、あるパ・リーグ投手から聞いた話なのだが、昨シーズンにダイエー戦のため福岡に遠征した時のこと。某ダイエーの打者がバットを折りながら左翼越えの本塁打を放ったというのだ。実は、福岡ドームは日米野球で訪れるメジャーの選手たちが「ここはすごく広い球場だ」と驚き、彼らでさえ打撃練習でフェンス越えが難しい球場なのだ。実際に今回日米野球でも、東京ドーム以外で本塁打が記録されたのは福岡ドームと札幌ドームのそれぞれ1本のみ。それでもシーズン中は各球場で本塁打が量産されているのだ。

 確かにメジャーでもそうなのだが、本塁打というのはファンを魅了しやすいのは確か。しかし、今後“世界”を見据えて日本の野球を強化していく上で、日本だけで通じるボールを使うことに何のメリットもない。まずはワールドカップ開催を具体的に進めていく上で、使用球の問題を討議していくことになるだろう。それに合わせ、日本国内も日本プロ野球機構の下に世界基準のボールに統一すべきだと思う。

 そうすれば、世界の舞台に行っても各選手が普段通りのプレーができるし、ファンにとっても、世界中で使用球が統一されることで、国を超えて選手たちをある程度比較対象できるようになるだろう。今回のワールドカップ開催を機に、ぜひ日本がイニシアチブをとって取り組んでほしい。

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