セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
ミラン出遅れの理由。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byAFLO
posted2005/09/28 00:00
開幕4試合目にして首位ユベントスと宿敵ミランとのポイント差が5に開いたのは、単なる番狂わせではないような気がする。
8月28日の開幕戦ではセリエBから昇格したアスコリに先制され、何とか引き分けに持ち込んだ。チャンピオンズリーグでのフェネルバチェ(トルコ)との対戦も、MFカカのマラドーナに匹敵するウルトラ2発でなんとか勝利に結び付けたが、サンプドリア戦では早くも今季初黒星を喫すことになった。「鈍重なミラン」にサポーターは不安を覚えている。
「最近のロッソネーロ(ミランの愛称)にはスキが目立つ」
2年前のチャンピオンズリーグのデポルティボ戦に始まり、記憶に新しい昨年度の欧州チャンピオンズリーグ決勝戦での空前の大失態「6分間の悪夢」など、どうもミランは大事なところでの致命的なミスが後を絶えない。
サンプドリア戦ではボールのキープ率70%に加え、12本のシュートで相手を遥かに上回る攻撃力を見せたにもかかわらず、サンプドリアに許したたった4本のシュート(うち2本が得点、1本がポストに直撃)が命取りとなった。宿敵ユベントスが3連勝と好調な滑り出しをしたこともあって、確実に勝ち点3を積み上げなければならない試合だったというのに、単純なミスの連発により自分たちで首を絞めてしまったのだ。
「無失点神話の崩壊」
持病再発に伴い、DFスタム、マルディーニの鋭いダッシュが効かず、守護神ジダのスランプがディフェンスの委縮に輪をかけ、かつての「最強の壁」は窮地に陥った。さらにMFガットゥーゾとセードルフの緊張感のなさとパスの精度の低さがチーム全体に危機感を募らせた。
振り返れば、夏季移籍期間に大金をはたいてFWジラルディーノを獲得した上に、ビエリも加入させて豊富な攻撃陣を構築したものの、守備の補強を怠ったことが仇となっている。傷物のMFヤンクロフスキーも復帰のめどが立たず、左サイドバックのパンカロを放出したのが裏目にでてしまった。
9月、10月は通常「魔の秋期」と呼ばれ、度重なるゲームに十分対応できるだけの持久力とチームの緊張感がモノをいう。この2点をクリアし、チームを活性化させるのは「ターンオーバー制」の導入しかないだろう。とりわけこの時期はワールドカップドイツ大会への出場権を目指し、代表クラスの選手への労力の負担が計り知れないだけに、戦力のローテーションは絶対条件であり、また不動の主力組に刺激を与えることでチーム強化に通じるメリットもある。
そもそも控え選手だけで一軍チームが完璧に構成できる豪華キャストを揃えたミランが、ターンオーバーのシステムに消極的なのはなぜかと私はいつも疑問を持っていた。現在の危機的状況を考えたら、同じ顔ぶれで勝ち点を取りにいくのはもはや不可能に近い。
ターンオーバーの起用でついに采配の方向転換を試みたラツィオ戦では久々に完封勝利を飾った。頼るところはおなじみカカとシェフチェンコだったが、その日先発フル出場したMFアンブロジーニの粘りのあるプレーが弱腰な守備を救った。
ミランが本調子を取り戻すことができなければ、FWの神様ファンバステン(現オランダ代表監督)かライカールト(現バルセロナ監督)の指導力に依存することになるのだろうか?