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山本“KID”徳郁「おいしいところはオレがもらう。」
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茂田浩司Koji Shigeta
posted2004/12/02 00:00
「アテネオリンピックの前にやったとしても、話題をそっちに持っていかれるから、イヤだった。だから、アテネが終わった後だなって考えたら年末になった」
山本“KID”徳郁は、ほんのりと赤く、上気した顔で現れた。試合まで2カ月を切った時期の二日酔いをKIDはこう“弁解”した。
「朝まで飲んでました。本格的な練習に入る前に友達を集めて『これが最後』っていつも盛り上がるんですよ」
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じゃあ、これから大晦日の試合が終わるまでは一滴も飲まない?
「飲まない。いや、一滴もっていうわけじゃないけど、へへへ」
大一番が近づいても自分のペースは決して崩さない。「KIDとは実力が違う」という魔裟斗の言葉に全く動じない。
「魔裟斗君はセンスのないことばっかり言ってる。相手のことを言うなら考えて言わなきゃいけないのに、何も考えてない。あの言い方は自分を落としてるだけだから」
KIDのパンチは当たらない、一切触らせないと魔裟斗は言っているが……。
「それなら、オレはオープンフィンガーグローブでもいいんじゃない。触れないなら素手だっていいはずなんだし。それにKIDはまだK-1で本物とやってない、とか言ってるけど、じゃあ、魔裟斗君も本物とやってなかったんだね。モンゴルのヤツ(ナラントンガラグ)とか村浜(武洋)とか、お前が苦戦した相手をオレはKOしたんだよ、って」
ムキになる魔裟斗を笑いながらも、冷静に分析していた。
「彼の気持ち、オレはよく分かる。相当追い詰められてるし、『ヤバイ』と絶対思ってる。だって、本当にオレのことが眼中になかったら、オレが何を言っても『ハイハイ、やりましょう』って流すでしょう」
魔裟斗対KIDを提案したのは他でもない、KID本人だ。7月の世界大会を前に魔裟斗が「3連覇して引退する」と「引退」の2文字を口にしたことがきっかけだった。
「力を比べてみたいから引退する前にオレとやってほしいと思って。総合じゃ絶対にオレとはやらないから、K-1ルールでいい」
とはいえ、K-1ルールでの試合経験も技術も魔裟斗とKIDではその差は歴然。本人もそれは認めるところだ。
「魔裟斗君は強い。平均的に全部強い。でも、クセがない。切り札がない。だから『これでぶっ倒す』って覚悟もない」
(以下、Number616号へ)
