博多の人・王貞治BACK NUMBER
「もしもし、王です」「どちらにお掛けですか?」“優勝請負人”にホークス王貞治からまさかの電話…そして野村克也が「考え直せ!」と言ったワケ
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2026/08/06 11:04
尾花高夫(左)の家の電話を鳴らしたのは王(右)だった。その真意と、野村克也との関係とは
野村克也からの連絡
「尾花、お前、もう王に返事したんか?」
野村克也が連絡を入れてきたのは、ヤクルト監督退任直後、1999年からの阪神監督就任が決定的になった時だったという。
「明日契約します」
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「考え直せ」
「いやいや、無理ですよ」
ただ、王は5年契約の5年目。優勝できなければ、退任の可能性が濃厚だ。それは、野球界でも大きな関心を呼んでいた話題だった。
「王も優勝は無理やな。分かった。そしたら、来年や」
ダイエーで優勝を逃せば、阪神に来いという“予約”だった。しかし、皮肉なことに、ダイエーは日本一になり、野村阪神は最下位。阪神監督退任後、解説で福岡に来ると、尾花は野村のために、中洲で食事と酒席を準備した。そこで決まって、嘆かれたという。
「アンタが、ぼやぼやしているからよ、って言われたらしいんだよ」
尾花が、野村から聞いたという裏話を、笑いながら明かしてくれた。夫人の沙知代が尾花を王に“さらわれた”野村に「だから言ったでしょ」と怒鳴り上げたという一幕だった。
「尾花さん、絶対に採っておきなさいって、サッチーに言われてたんや」
もしも野村が先に電話をしていたら……
野村は、阪神で3年連続最下位。対照的に、尾花をコーチに招いた王は、99年からの3年間で比較すれば、日本一、リーグ優勝、2位。勝負の世界に「もし」の話をしても詮無い事だが、仮に野村が王より先に電話を入れ、尾花が阪神に行っていれば、ダイエーと阪神の成績は逆になっていたとまでは言わなくても、野村阪神の成績だって、もう少しばかりマシだったかもしれないという推察は、あながち的外れでもないだろう。
〈つづく〉

