博多の人・王貞治BACK NUMBER
「もしもし、王です」「どちらにお掛けですか?」“優勝請負人”にホークス王貞治からまさかの電話…そして野村克也が「考え直せ!」と言ったワケ
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2026/08/06 11:04
尾花高夫(左)の家の電話を鳴らしたのは王(右)だった。その真意と、野村克也との関係とは
「監督って、一緒にやったら分かるけど、常にすごいタイムスケジュールなんだよ。それを2日後、休みのときに東京に来るっていうことは、来る時間の中に予定が入っていたのをキャンセルしたか、変更したか、っていうことなんだよ。
普通だったら、あれだけの人になったら『尾花君、悪いな。俺も忙しいから、ちょっと高知まで来てくれるかい?』で、それで全部済むじゃないですか。でも、監督の中では、そこは“お願いする身”だから、自分が東京に出向いて、話をして、そこから決めようというようなことだと思うんだけどね」
王の“待ち合わせ伝説”
尾花の驚きは、さらに続く。
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王の電話から2日後、指定されたレストランに「遅れるわけにはいかない」と、尾花は待ち合わせの時間よりも15分ほど早く到着したのだという。
すると、王が店の中から出て来て「どうもありがとう」と尾花を出迎えたのだ。
「すみません、お待たせしました」
「いや、大丈夫だよ。まだ約束の時間より早いから」
王の律義さを物語る、この“待ち合わせ”のエピソードは、尾花の件だけではない。
時期は後になるが、ダイエーからソフトバンクへの球団譲渡が決まり、孫正義とオーナー代行の笠井和彦が王との会食の席を設けたとき、2人は「王さんを待たせるわけにはいかないから」と予定開始時刻の30分前に到着したのだという。なのに、この時も王は、すでにその店に先着。尾花の時と同じように、店で孫と笠井を出迎える形になった。
話を戻そう。
王と尾花の“野球観のすり合わせ”は、4時間にわたる熱い議論となったという。
「野球はピッチャーです。バッティングじゃないです」
世界のホームラン王に、尾花はひるむことなく、持論を展開した。
「いくら打っても、毎日打てるわけじゃない。でも、ピッチャーがよければ、毎日、ある程度は抑えられる。そこは言いました」
その話し合いを経て、尾花の投手コーチ就任が決まった。そして尾花が福岡へ出向いて契約するという、契約前日のことだった。

