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「行ったり来たりは本当にやめてほしい」トヨタとハースの業務提携の背後でかわされた、モリゾウと小松代表の本音のぶつかり合い
posted2024/10/25 11:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
10月11日、トヨタが富士スピードウェイがある静岡県で会見を行い、トヨタ・ガズー・レーシング(TGR)がハースF1チームと業務提携に合意したと発表した。
TGRとは、2017年に発足したトヨタのガズー・レーシング・カンパニーが展開しているモータースポーツ活動で、そこで得た知見を商品開発に生かしつつ収益にもつなげる好循環を目指している。
会見の冒頭で、ガズー・レーシングの高橋智也プレジデントは、あえてこう述べた。
「『トヨタF1復帰!』と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません」
それではなぜ、TGRはハースF1と業務提携したのか。
15年前の忸怩たる思い
「F1でのドライバー、エンジニア、メカニックの活躍は子どもたちにとって、夢や憧れ、目標となります。将来の自動車産業を担う子どもたちに、そのような希望を与えることは非常に重要なことだと考えています」
そのためTGRは、ハースF1とともに『ドライバー育成プログラム』を新設。世界の頂点を目指すドライバーを育てていくことにした。具体的には、TGRの育成ドライバーがハースF1のテスト走行に参加してF1での走行経験を積み、将来的にF1のレギュラーシートを獲得できることを期待している。
この会見には、トヨタの豊田章男会長も同席した。ただし、トヨタの会長としてではなく、「モリゾウ」として出席した。モリゾウとは豊田会長が「ひとりのクルマ好きのドライバー」になったときに使われる愛称だ。なぜ、会長ではなく、モリゾウとして出席したのか。
それは15年前にトヨタがF1から撤退したとき、トヨタの社長として撤退会見を行ったのが、当時社長を務めていた豊田だったからだ。その会見に同席していたトヨタF1チームの山科忠代表が会見の途中で涙する横で、会社を代表する豊田は取り乱すことを許されず、最後まで冷静さを失わなかった。それゆえ「F1をやめた人」というレッテルを貼られ、苦しんできた。