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セーブ失敗で崖っぷち「強心臓クローザー」平野佳寿40歳や益田直也34歳、山﨑康晃31歳らは“失格の烙印”を覆せるか…世代交代が難しい事情
posted2024/05/10 11:08
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama/Naoya Sanuki
5月1日、ほっともっとフィールド神戸でオリックス対ロッテ戦を観戦した。この日の観客動員は30019人。この球場には、イチローが若かったころから通っているが、日本シリーズ以外でこんなにお客が入ったのを見たことはなかった。
失策が絡んで5失点でも…簡単に替えられないワケ
オリックスが3対1でリードした最終回「Warning!」という恐ろし気な音声が流れて、絶対的なクローザー、平野佳寿がマウンドに上がった。平野はほとんどの登板で走者を出すが、それでもセーブをもぎ取る手練れだった。
ロッテの9番打者・小川龍成は二ゴロに打ち取ったが、これをこの回から守備固めに入った安達了一がエラー。平野は表情を変えずに代打角中勝也と対する。バットを短く持った角中はしぶとくライト前に運ぶ。さらに石川慎吾の右前打で1点が入る。左翼のロッテ応援団が沸く中で、グレゴリー・ポランコの打球はまた二塁へ。これを再び安達が処理できず失策。オリックスは浮足立った。
雨混じりの球場は、気温13度。5月とは思えない寒さだった。続く藤岡裕大は三振に切って取ったが、続く安田尚憲は左翼手の頭上を超す2点適時二塁打。一挙に逆転される。ここで、平野は交代、一死しか取れず全力疾走でベンチに帰る平野の心境はいかばかりか。代わってマウンドに上がった井口和朋から佐藤都志也が右前タイムリーを打つなどロッテはこの回、決定的な5点が入った。
コーチ兼任の内野守備の名手、安達了一は二塁手のパ記録となる1イニング3失策。平野、安達と長くオリックスの「守り」を支えてきた名手の信頼が音を立てて崩れた夜だった。
クローザーというポジションは単に「球が速い」「制球力が良い」「いい変化球がある」だけでは務まらない。
チームが僅差でリードした状況でマウンドに上がり、そのリードを保ったままで試合を終わらせるためには「技術」「体力」「経験」に加えて「度胸」がいる。少々打たれても平然としている「強心臓」がないと務まらない。だから失敗しても、簡単に替えるわけにはいかない。
長年クローザーを務めてきた名投手たちの苦戦
成績的に見ていくと――NPBのいくつかの球団で、チームの最後を締めくくってきたクローザーの「耐用年数」が切れつつあるように思える。