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ドラフトウラ話…“度会逃し”の中日は2位指名で「横浜高校同期」…もし1位を当てていたら? ドラフト全指名を検証する《中日・日ハム・ヤクルト編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/09 11:00
中日2位指名の津田(左、三菱重工East)とDeNA1位指名の度会(ENEOS)は横浜高時代の同期。競合くじによっては命運が変わっていたかも…?
2年連続のリーグ制覇から、よもやのあわや最下位。
投手成績は、ほぼリーグ・ワーストなのだから、ドラフトも頭から3人、来季の戦力を期待できる投手たちを持ってきた。
6年前の夏、西東京大会の決勝で、早稲田実業高・清宮幸太郎選手(現・日本ハム)をさんざん苦しめた松本健吾投手が亜細亜大、トヨタ自動車のエースを経てのドラフト2位指名だ。
高校時代からのゲームメイク能力に、徐々にパワーを加えていって、150キロに達した速球にスライダー、カットボール、フォーク。変化球の精度も磨き上げ、立派にプロのローテーション候補に値する実力者になった。熾烈な都市対抗の現場も経験して、困った時の引き出しも多く、鬼が笑うかもしれないが、私は、来年の新人王有力候補とみている。
コントロールに不安を持っていた3位・石原勇輝投手(明治大)が、この1年、ぐっと安定感を増してきた。投球時に首を振らなくなってフォームのボディーバランスが良くなったように見えるが、これだけの「安定化」にはもっと他に理由があるはず。
落差の大きなカーブがカウントをとれるのは、大きなアドバンテージ。まだ見せていない潜在能力の大きさ、つまり大きな将来性も感じている。
「日本の野球が<捕手>から滅んでいく」危機感
今年の支配下ドラフトでは、「捕手」が5人しか指名されなかった。実は、昨年のドラフトでも5人だけで、つまり2回のドラフトでも12球団に「捕手」が行き渡らなかったわけだ。
だいぶ前だが、「日本の野球が<捕手>から滅んでいくのではないか」……そんなコラムを書いたことがある。現実にならないことを、ずっと祈っている。
4位・鈴木叶捕手(常葉大菊川高)は、その5人の中で私の中では「2番目」と見ている。徐々に腰が割れるようになって、地肩の強さが生かされてきたスローイング。センバツ優勝捕手で社会人・ENEOSでも鍛えられた石岡諒哉監督の「捕手脳」をどれだけ受け継いできたか。そこがとても興味深い。捕手の能力は、「二塁送球1秒8」だけじゃない。
そして、5位・伊藤琉偉内野手(BC新潟)のフィールディングだ。
コロナ発生の前年だから、東京農大二高(群馬)2年時、柔軟な全身の連動で、痛烈な打球も涼しい顔でさばくショートストップだった。長打はないが、コンスタントに安打を積み上げる打撃センス。均整を保ったまま、ひと回り大きくなった体躯とパンチ力。そのまま東京農大にいたら、来年は上位候補だったはずだ。
今年のBCリーグ、支配下ドラフトで上がってきそうな遊撃手が2人いた。
この伊藤遊撃手と西武育成4位・金子功児内野手(BC埼玉)。金子遊撃手については、「西武」の項でじっくりと。
<西武・巨人・楽天編へ続く>