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甲子園球児の「好きなプロ野球チーム」はどこ? 1位ならずも“巨人の人気が落ちない”理由…カギは「BSテレビ中継」にあった〈ランキング〉
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/04/07 11:03
「巨人の人気は下がった」「テレビの影響力は落ちた」。この定説は本当なのか? 「好きな球団」ランキングから考察する
際立つ「ソフトバンクの先見性」
福岡ソフトバンクは2年連続で優勝を逃したが、「好きな球団」では1位だった。なぜ、人気を維持しているのか。過去10年で6度の日本一という強さに加え、2007年から地上波のTOKYO MX(神奈川、埼玉、千葉、茨城の一部でも視聴可能)で生中継を続けている点も大きいだろう。1年目の25試合から徐々に増えていき、近年はビジターも含め年間70試合前後が放送されている。ネットにはソフトバンクの放送枠買い取り説も流れているが、事業開発部のディレクター(当時)は否定していた。
〈われわれも他局と同様、TOKYO MXさんからもきちんと放映権料を頂戴しています。ただそれ以外のところで、ほかの放送局とは違うビジネスのかたちをとっています〉(2016年6月4日・NewsPicks)
“東京ローカル”に目をつけた戦略は斬新で、TOKYO MX放送対象地区に絞って、2023年のセンバツ球児「好きな球団」を見てみると、巨人に次ぐ2位だった。長年のTOKYO MX中継の効果と言っていい。
“無料の全国放送”はやはり強い
昭和の頃から、関西地方では「人気は強ければ高くなり、弱ければ低くなる」という公式が成り立ちづらい。阪神は19年間も優勝していなかった1984年春、「好きなプロチーム」2位。17年間もペナントから遠ざかっている2023年春、「好きな球団」3位である。昨年の「BS中継数」2位であり、関西ではマスコミを席巻しているため、優勝しなくても人気上位に来るようだ。5年間で4度も最下位になった翌春の2000年でも「好きな球団」2位だった。
逆に言えば、関西メディアで阪神の牙城を崩すのは難儀である。かつて南海、阪急、近鉄という在阪球団は身売りや消滅という憂き目を味わっている。だが、オリックスには朗報がある。昨年、無料放送の『BSよしもと』(265ch)、『BS松竹東急』(260ch)、『BSJapanext』(263ch)が開局。今年『BS松竹東急』では、オリックス戦がオープン戦含め21試合放送され、「BS中継数」最下位だった昨年より増加が見込まれる。先述した「人気=優勝+メディア露出」の公式に基づけば、この3局を活用できるかがポイントになるだろう。
メディアは多様化し、テレビが王様の時代ではなくなった。しかし、球団の強さだけでなく、いかに“無料で全国放送されるか”は今も重要なようである。