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大谷翔平のインタビュー“あっさりなのに”なぜ深い? 振り返ってわかる“コメントの真意”「本当に打てたとは言えない」「もっとできると思える」
posted2023/03/08 17:06
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
大谷翔平が放った打球がホームランになるか否か――それを見極めるには打球を追うよりも、“打った後の大谷”を見る方が分かりやすい。
「確信歩き」はなぜ?
3月6日の強化試合・阪神戦での第2打席で、膝をつきながら京セラドーム大阪のセンター奥深くまでぶち込んだ一発。最も飛距離が必要なセンター方向の打球にも関わらず、大谷はすぐさま一塁に走り出さなかった。
一方、この試合で5回表に回ってきた2死一、二塁の第3打席。カウント3−2からのストレートを一閃してスタンドに放り込んだ大谷は、今度こそ打ってすぐに一塁へ歩み出したものの、およそ「走る」というには程遠いものだった。
これら2つの本塁打に共通しているのは、バットでボールを捉えた瞬間に、大谷がホームランになることを「確信している」ということである。特に2本目は打球がゆうゆうスタンドに届いたわけではなかったというのに。
野球ファンの間ではそうした振る舞いを「確信歩き」と表現するが、なぜ大谷は走らないのか。
そのナゾをひも解く鍵は、日本ハム時代に大谷翔平を取材した際のノートにあった。このインタビューは、結果として大リーグ挑戦前の最後の年となる2017年1月に実施したものである。
語っていた「説明できる打席」の追求
前年(2016年)、二刀流で日本球界を席巻し、チームを日本一へと導いた大谷は、自身のバッティングを向上させる上で大切なこととして次のような話をしていた。
「なんで打てたのかということがちゃんと説明できる打席が増えてこないと、それは本当に打てたとは言えないと思う。いい反応をして、いい軌道が生まれたバッティングがホームランにつながる。つまり、自分が求めていきたいスイングをした時にはホームランになるんです。でも例えば、たまたまバットに当たってヒットになったものは、説明がつかないじゃないですか。そうならないようにするための努力をすることを大事にしたい」
この発言を要約するに、「ポテンヒットなど野手の間にたまたま落ちたようなものは『なぜヒットになったか』を説明できない。一方、ホームランには理由がある。捉えた時に、これはホームランになるという説明が自分にはできる」ということになるだろう。
ホームランを打つためのアプローチ。それが実践できてバットに当たった時、大谷は迷いなく一塁へと“歩く”。「これはホームランになるはずだ」と。