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WBC優勝のカギは”第二先発”今永昇太が握る? 14年前、完璧リリーフで”影のMVP”と称された杉内俊哉の教訓「捨てる勇気も大事」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/02/24 17:55
WBCでは第2先発のキーマンとして活躍が期待される今永昇太
「ボール(大会使用球)はびっくりするくらい馴染んできていますが、日本のロージンが使えることになったのが大きいですね。アメリカのロージンは最初はグリップが出ないんですけど、馴染んできたときにくっつく感じになって、グリップが効くようになる。時間が経つとそうなってくる。僕はグリップが一定でずっと変わらない日本のロージンの方が扱いやすいですね」
今回の日本代表は先発陣にダルビッシュ、大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)、山本由伸投手(オリックス)に佐々木と右投手が揃う一方で、第2先発には今永を筆頭に高橋奎二投手(ヤクルト)に宮城大弥投手(オリックス)と左投手が3枚揃う(残る第2先発は右投げの巨人・戸郷翔征投手)。その中で経験、実績を考えれば中心的存在となるのは、やはり今永をおいて他にはいないだろう。それだけあのときの杉内と同じようにポイントとなる試合、大事な局面でマウンドを任される機会も多く、責任も重い。
第2先発初実戦のチェックポイント
25日の初実戦ではまずは試合の感覚を確認することをテーマにマウンドに上がる。
「試合になるとちょっとギアが上がったり、ブルペンよりも力む場面が増えるので、そこをブルペンと同じ力感で投げられるように。このフェイズでは力まない方がいいなというのを確認したいですね」
これが第2先発初実戦のチェックポイントだ。ただ本番になればどんな形の出番になっても、実はやることは同じなのだと左腕はおだやかに語る。
「やっぱりこういう大会になると調子がいい選手とか、悪い選手とかって、それは人間なので、必ずあると思うんです。だから相手がどうのとか、どういうポジションで投げるとか、そういうことより大事なのはしっかり自分はコンディションを整えること。その上で試合で最大限の力を発揮したいと思います」
投げる環境は変わるかもしれない。それでもしっかりとコンディションを整えれば、いつも通りのベストのパフォーマンスはリリーフでも再現できるはずだ。そして同じ立場で日本を世界一に導くキーマンとなった男のこんな言葉が響くはずである。
「(リリーフの)調整が難しいとは思わなかった。むしろ短いイニングなので、入りやすかった。あとはボールの影響で使える球と使えない球が出てくることがある。使えない球を思い切って捨てる勇気も大事だと思う」
これが大会後に杉内が語っていた、WBCの教訓だった。
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