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WBC優勝のカギは”第二先発”今永昇太が握る? 14年前、完璧リリーフで”影のMVP”と称された杉内俊哉の教訓「捨てる勇気も大事」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/02/24 17:55
WBCでは第2先発のキーマンとして活躍が期待される今永昇太
杉内俊哉(現巨人三軍投手コーチ)である。
杉内コーチはこの第2回大会だけでなく王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)が率いた第1回大会、そして山本浩二監督(元広島監督)が率いた第3回大会にも日本代表として出場。ソフトバンク、巨人と所属したチームではローテーションの軸を担う先発投手だったが、WBC3大会の計10試合の登板は、すべてリリーフという役回りだった。
完璧なリリーフを見せた杉内俊哉
特に第2回大会では、第2先発からピンチの緊急リリーフと八面六臂の活躍。その中で印象的だったのが第2ラウンドで生き残りをかけたキューバ戦と、準決勝でのアメリカ戦での完璧なリリーフだ。
負ければ即、敗退が決まるという状況で迎えたキューバ戦では、先発の岩隈久志投手が6回を無失点に抑えると、7回から2番手でマウンドに。3イニングを無安打4奪三振と完璧に抑えてセーブを記録した。
準決勝のアメリカ戦は6対2と4点リードで迎えた5回に出番が回ってきた。先発の松坂大輔投手が2死一、二塁のピンチを招いた場面だ。
「ブルペンの電話が鳴って『ダルビッシュと言って!』と内心で祈るような気持ちでした」
この準決勝からリリーフに回ったダルビッシュ有投手(当時日本ハム、現サンディエゴ・パドレス)と並んで投球練習をしていた杉内の叫びだった。しかし呼ばれたのはダルビッシュではなかった。
「『杉内、行くぞ!』と声が掛かった瞬間に、一気に血が沸騰するような感じになるんですね。それで体をパン、パンっと叩いてマウンドに向かいました」
対したのは「ビッグ・ドンキー」と呼ばれメジャー通算462本塁打を放った左打ちのスラッガー、5番のアダム・ダン外野手。
「曲がり球で追い込んで最後は高めの真っ直ぐでした」
会心のピッチングで空振り三振に仕留めると、杉内は続く6回も無失点に抑えて、日本の決勝進出への流れをぐいっと引き寄せたのである。